アメリカビザ 延長申請

「ギリギリのルールだよ、一応表面上の理屈は通っているけど、

モラルというか、フェアというか、サービスの面では明らかに問題がある」

そう言ってケンがあまり歓迎していなかったアメリカ国内でのビザ延長申請のこと、

わたしなりに調べてみた。


アメリカビザ自体の延長申請は現在アメリカ国内ではできないけど、

アメリカ国外の米国大使館・領事館ではできる。

推奨されているのは母国でのビザ申請だけど、

アメリカ国境線沿いの大使館や領事館、例えばカナダやメキシコでも申請は可能なの。


それと、これは以前にケンによく説明してもらったので理解しているんだけど、

アメリカビザのルールでいえば、ビザの有効期限と滞在可能な期限は異なる。

ビザは入国時に有効であればよくて、一端アメリカに入ってしまったら、

I−94(入国カード)に手書きで書かれた日付までが合法的な滞在可能期限で、

アメリカ国内でもI−94の延長申請はできる。

ビザは失効してもアメリカ国外に出ない限り

I−94さえ延長していれば不法滞在にはならない。

だから問題ないみたい。アメリカ国内でビザ延長できなくても、最悪は問題ないよ。

 

 

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「でもねtoko、よく考えてみようよ」

わたしが覚えた限りのことを口にするとケンは残念そうな表情でこう返してきた。

「それにtokoが今言った通り、理論的にはちゃんと説明がつくね。

昔はアメリカ国内でも延長申請ができたんだけど、まぁ2ヶ月も3ヶ月もかかっていた」

ケンはちらりと視線を落として、

「今後は国外で申請してくれと言われたのはちょうどアメリカビザ制度変更の真っ只中で、

本面接時の指紋スキャニングが導入された2004年だよ。

アメリカ国内ではその設備がないから延長申請はできない、と説明を受けた。

だからといって、I-94さえ延長すればいい、という話にどうして結び付けられるのか、

僕にはどうも納得がゆかないんだ」

と言った。


「アメリカを出たら一週間ぐらいかけてビザ申請をして

新しいビザシールを受け取らないといけない。

それは時間がある人はいいよ。でも忙しいビジネスマンに本国に戻った時に

わざわざ大使館まで出向く時間、一週間もの時間を捻出させるのは酷であると思うよ。

やっぱり、他の方法はあるべきだと思う。

アメリカ国内での延長申請という選択肢も残すのが人道的だと思うんだ。

それはね、自分がアメリカという外国に住んでいる一外国人だ、

という意識がきちんとある人にとっては難なく受け入れられる話かもしれない。

そのくらいの工数がかかっても海外に住むためには当たり前のことだとも言えるけどね」


「ケン、他の国ではどうなの?」

「どこも国内延長はできるよ。

一部の発展途上国では申請に時間がかかり過ぎたり、

賄賂をせびられたり、短いビザしか出してもらえなかったりすることもあるから

日本に帰ってきて申請するところもある。でもそれはごく一部だ。

標準は自国内でできるんだよ。

国内にいる限りはI-94さえ延長しておければいい、という話は

ギリギリの薄氷というか、最低限のラインだね。

税金を払う非移民者、アメリカで生活をしている人に対しては

その扱いは弱すぎると僕は思うんだ。

もっと選択肢があってもいい。もっと厚くカバーする方法があってもいい。

このルールには大反対というわけではないけど、いつ思い返してみても

この国内延長のことは残念なルールだなぁ。やっぱり悲しいことだよ」


そう言って目を逸らすケンの背中はすっかり丸まっていて、

わたしは「改善を求める人の声が集まれば時間の問題でまた変わってゆくよ!」と

励ましてあげたかったけど、どうやら今は声をかけてあげられないみたいに思えた。

 

アメリカビザ面接 体験談

「アメリカ大使館でのビザ面接、今無事終わりましたので

これからそちらに領収書をお持ちしてもいいですか?」

もちろん断る理由なんてないですよ。面接の様子も聞きたかったし。

「はい、いつでもお待ちしています」

そう告げて電話を切る。

このお客さんは偶然ケンがいない時ばかり電話をかけてきたから、

わたしが担当みたくなって案内していた。今面接が終わって、

その足でLビザの追加代金500ドルの領収書を持ってきてくれるとのことだった。

 

しばらくしてそのお客さんはカウンターに姿を見せた。レシートを受け取り、

「面接はいかがでしたか?」と聞くとそのお客さんは笑いながらこう言った。

「いや、事前にtokoさんに聞いていたとおり、あっという間でしたよ。

質問は名前と会社名と何年勤めているのか、っていうことだけでしたね。

あとは指紋をスキャンして終わり」


「やっぱりそうですか。どのぐらいお待ちになりましたか?」

「トータルで1時間ぐらいでしたね。

まぁ朝早かったので列ができていることもなかったからですかね。

正直、がっかりでしたよ。もっと面接らしい面接を期待していたんですけど・・・」

笑いながら話してくれるからまだいいものの、

やはりそれが誰もが思う感想なんだな、って思った。


「そうですよね。みなさんそうおっしゃいますから」

「言いたいのはただ一言、時間がもったいない、っていうことですよ。

別にtokoさんに言っているわけではないですけど、

やっぱりこういう内容の面接をするぐらいなら、面接のための移動時間とか

拘束時間のほうがよっぽど問題で、内容のある面接ならまぁ納得もできるけど、

名前を聞かれるぐらいだけじゃ腑に落ちないっていうか

時間の神様に怒られてしまう、っていう感じですかね。

面接に使ったこの半日があれば結構な仕事がこなせてますから。

いえ、これはただの愚痴ですから聞き流してください」

 

 

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「えぇ、半日仕事ですもんね、ビザ面接だけで」

「ある意味、いよいよ外国で住むんだな、っていうことをわたしは実感しましたよ。

日本だけにいたら分からないですけど、

大使館の中はもう完全なアメリカでしたからね。

なんて言うんでしょう、異国人同士が理解し合うのには

こんなにも時間と工数がかかるんだな、

って思いました。だから結局は面接も仕方ないことかもしれませんね」

この方は部長さんで、きっとお子さんの学校の都合があって家族を残して

単身赴任される方だったのを思い出した。

わたしみたいな子供とは違うのかな、大人の理解がある方だと思った。


「異国人同士の理解、そうかもしれません。

日本の役所で何か書類の手続きをする感覚で

ビザ面接を考えていたら、やはり違いますよね。

外国人同士の相互理解のためですから、

こんな一見無駄な工数もかかっても仕方ないかもしれません」

「そうですね。でも、ひょっとすると100年、いや50年後の人たちからすれば

全員の本人面接なんて冗談みたいで笑われてしまうかもしれませんよ。

いや、僕が世界を甘く見すぎているのかな?

それともこの程度の時間を取れないぐらい

会社の仕事ばっかりしている日本人が

働きすぎってことかな?あははは」


そう言ってお客さんは帰っていった。そのことを後でケンに話すと、

彼はにっこりと笑ってこう話してくれた。

「それは誰もが思う率直な感想だね。

たまにテレビでやっている昔の不思議な習慣とかがあるよね、

ああいうのも今からじゃまったく想像できないけど、

当時は当時でやっぱり必死だったんだよ。

今僕たちが抱えているビザの問題も、そのお客さんのおっしゃる通り、

時代が変われば笑い飛ばされてしまうことなのかもしれない」

「ホント!こんなの未来ではナンセンスになってるかもね。

いいえ、ナンセンスになっていて欲しい」


「toko、僕のいつも言う言葉を覚えているね?」

にやりと笑ってケンがそう振ってきた。もちろんよ、あれでしょ、あれ。

「“願うのは世界平和とビザの簡素化”、でしょ。分かってますって」

「そうだよ、この仕事をしているとそのことが本当に大切だって分かってくる。

すぐにとはいかないけど、世界がその方向を向くことを願っているよ」

穏やかな顔つきでケンがそう言う。ビザの世界の差別や不平等が

身に染みて分かっているケンだからこそ、その痛みがはっきりと感じられるのだろうか。

それからも、このお客さんの言葉やケンのことを思い出すと

世界平和を祈る気持ちに深みが出てきたと自分でも思った。


こんな気持ちを世界中の人たちに分け与えられたら世界は変わるかな?

いいえそんな想像こそ、世界を甘く見ているわたしの妄想なのかもしれない。

貧困があり、宗教があり、人種や歴史の複雑な問題があり、

世界中の問題は容易に解決できないのだろう。

でもまずは自分のできる現実的なこと、偏見や差別をせずに

世の中を見れるように努力しよう、そうわたしは改めて思った。

 

パスポートカバー

「パスポートカバーなんて付けてるのって日本人ぐらいでしょ。

他の国の人たちがパスポートカバーを使っているところなんて見たことないわ」


ずっと昔から、わたしは気になっていた。

ほら、空港の出入国審査場で「パスポートカバーを外してください」って書いてあるヤツ。

あんな親切な案内って日本だけだよね。


今のパスポートはバーコードがついていて、機械でデータ読み取りができる。

だからパスポートカバーなんて付けていたら、肝心のバーコードが読み取れなくてダメ。


そもそもパスポートの表紙ってちゃんと厚紙になっているから折れるわけじゃないし、

毎日持つものでもないので汚れることもないでしょ。

日本の出入国では毎回取らなくちゃいけないし、

なんでパスポートカバーをしているのか、ホントわたしにはよく分からなかった。


2006年の3月に日本のパスポートがIC旅券に切り替わった。

この時、初めてIC旅券の現物を手にしたケンが驚きの声を上げたていたのを覚えている。

 

 

 


「ね、旅子!大したものね、外務省さんも。

見て、これ!新しいパスポートは、表紙の裏がデータ面じゃなくなったよ。

これならここにパスポートケースつけてもデータ面が読み取れる。

日本の出入国でわざわざパスポートケースを取り外さなくてもいいんだよ」


確かにIC旅券はその通り。

パスポートカバーのかかる表紙の裏はただの紙で、

データ面は次のページから始まっているので、パスポートカバーはそのままでも良い。


「すごいね、ケン。これってパスポートの仕事に携わる人たちが不便さを感じていて、

改良したいっていう声が集まって、実行に繋がったのかな。

毎日毎日パスポートのカバーを外せ、とか言うのも面倒だしね。

お役所とか官僚とか言われている人たちのそんな工夫、普通はは誰も気にしなくても、

わたしたち旅行業界人ぐらいは気付いてあげても良いのかも」

「そうだね、小さくても工夫は立派」


物を大事にする日本人の文化かしら。

ひょっとしてこのIC旅券スタイルが世界の主流になって他国もマネをし、

他国の人たちもパスポートカバーをつける日がいつか来るのかもしれない。


・・・って一瞬感じたけど、やっぱりそんなのあり得ないよね。

ご丁寧なパスポートカバーなんて日本人だけの発想でしょ?!

海外とか国境という概念が日本よりは明らかに薄い人たちにとって、パスポートは日常だ。

日常だから、裸でパスポートを持つのだろう。

他国からするとヘンだな、と思うパスポートカバーだけど、それはそれで面白いとわたしは思ったよ。

 

大阪アメリカ総領事館 行き方

ケンが大阪出張から帰ってきた。

提携しているビザ業者との打ち合わせと、大阪アメリカ総領事館の見学に行く出張だったの。

「ケン、どうだったの?早く聞かせてよ」

出張から帰ってきたばかりだから、メールを見るとか仕事の整理とか

忙しいと思ったから午前中は黙っていたけど、午後になって催促しちゃった。


「あ、分かってます、分かってますってば。

リクエストの大阪名物・たこ焼きはちゃんと買ってきたから」

 

 

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――違う。そんなのじゃない。わたしは思わず知らん顔しちゃった。

「あ、大阪の街はね、びっくりしたのがエスカレーターは右に立つのが常識なんだって。

左は急いでいる人のために空けておくそうです。東京の逆なんだよ」

いらない知識だったけど、初耳だったからちょっと食らいついちゃった。

「そうじゃないでしょ〜!領事館よ、領事館。どんなカンジだったの?行き方教えてよ」

「あーあー、それね。逆にそっちの方ね」

すっごくわざとらしい。分かってるくせに。大体、何の逆?


「新大阪駅に御堂筋線っていう地下鉄が走っていて、それで4駅目の淀屋橋駅。

1番出口を地上に上がると、右手に橋が見える。

それが淀屋橋で、その右方向に広い道をずっと歩くんだ。

橋を過ぎると右手に大阪市役所がある。

それから頭上に名神高速がかかっているのを過ぎて、あとはひたすら道を真っ直ぐ。

駅から10分は歩かないかな。

道が二股に分かれるけど、右の道のすぐに沢山の警備が見えてくる。

それが大阪アメリカ総領事館さ」


「道順は分かりやすい?」

「大丈夫。ちゃんと1番出口で出て、右にさえ歩いていけば真っ直ぐだし、

大阪アメリカ総領事館の周りには特有の雰囲気、警備の物々しさがあるからすぐ分かる」

「東京アメリカ大使館の場所とは違う雰囲気かな?」

「ちょっと違う。東京アメリカ大使館はまるでひとつの城のように場所を構えているけど、

大阪アメリカ総領事館は街中に立っているひとつのビル、って感じだ」


「東京アメリカ大使館と、大阪アメリカ総領事館、どっちが好き?」ってわたしがふざけて聞くと、

「どっちも好き。それぞれの個性を尊重。僕と君の個性も同様に大事!」ってケンは言った。

やっぱりわたしとはちょっと違う人間なのね!あははっ!

 

アメリカ大使館 東京 行き方

「旅子、今お客さんから電話が入っていて、東京のアメリカ大使館に行きたいんだけど、

どう行ったらいいか、って聞かれてるの。分かる?」

 

電話のヘルプをお願いされた。

ケンは外出していたけど、その内容ならわたしでも分かる。

電話に出て説明してあげようと思った。


「すいません、そちらのケンさんから地図や案内は貰っていたのですが、家に置き忘れてしまいまして・・・」

そんな簡単な電話。

地下鉄の溜池山王駅ってことは分かっている方みたいで、今はそこにいるって言っている。

 

「13番出口です。そうです、そうです、駅についてからかなり歩く一番奥の出口です。

そこをあがってください。え? 今、13番出口ですか。

あがったら上に高速が走っているのが見えますね?

そうです、右手の方向に歩いてください」

 

 

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携帯電話だからちょっと声が途切れ気味だけど、ちゃんと聞こえている。

「はい、最初の交差点まで来ましたか。

交差点を挟んで向こうにスターバックスが見えますよね?

見えますか、では、その交差点を右です。右にまっすぐ行きましょう」


「そうです、歩いていると右に結構新しいビルがありますよね。

赤坂インターシティっていう新しくてお洒落なビルですね。

道路の反対側にコンビニもありましたか?

はい、もうちょっと真っ直ぐ歩くと大使館が見えてきますよ」


「あっ、警察の方に声かけられたんですよね?

目の前にちょっと人が並んでるところ、ガードマンがいる門が見えましたか?

はい、そこです。

そこで面接予約の紙を見せて、ID代わりでパスポートを見せて入ってください。

面接はあまり心配しなくていいですから、流れに沿って受ければOKです。

お気をつけて。いいえ、どういたしまして」

それで電話を切って、わたしの電話誘導は終わった。


電話を取り付いだコが近寄ってきて、

「やるじゃーん、旅子、なんか目隠ししても歩けるみたい?!」って言われた。

そうよ、わたし、大阪アメリカ総領事館の行き方は分からないけど、

東京アメリカ大使館になら、もう何十回も行ってるんだから。

目隠ししても歩けるかもしれない。


でもホントに目隠しして歩いたら警備の警察の人に怪しまれるよね!

あははっ!

 



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