アメリカ入国審査トラブル

「ケン、この前会った客から意外な話を聞いた。

長年この世界にいるわたしでも、まるで始めてのケースでね、

君の耳に入れておいた方がいいと思って」

「それは大歓迎だね、フレディ!聞かせておくれよ」


「日本企業の人事担当者なんだけどね、

従業員が久しぶりのアメリカ出張から帰ってきて相談を受けたみたいなんだ。

アメリカ入国時にパスポート番号がひっかかって、

別室に連れて行って尋問されたらしい」

「ん?パスポート番号が?」

「そうなんだ。まるで信じられないお話だけど、

その従業員のパスポート情報が盗まれて同じパスポート番号で

以前に香港から不正入国したヤツがいたと聞かされたそうなんだ」

「へぇ。そんな話は僕も初耳だな」

 

 

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「そうだろう?パスポートを紛失して、

そのパスポート番号で偽造パスポートが作られて、

それで不法入国されたのなら分かる。

そうじゃなくて、今自分が持っているパスポートはそのままなのに、

パスポートデータだけが盗まれて悪用されたなんて、

どうやらすごい手口のようじゃないか」


「フレディ、それは数十万人に一人のケースかもしれないけど、

一生そのデータがつきまとうってことじゃないか。かわいそうっていうか、不幸だな。

パスポートを更新して次の番号を入手するしかないにしても、

きっと毎回アメリカに入国するときに質問されてしまうのだろう?」


「多分そうなるよ、ケン。移民局や入国審査のデータは精密なものだからね。

こんなケースは二度とないかもしれない。本当にいい迷惑なケースだよ」

「僕のところでは同姓同名の犯罪者がいる、っていう事例があった。

これも不幸だよね、全然関係ないのに、毎回疑いの目で見られる」


「あぁ。どんなにシステムを作り、万全を期したつもりでも例外中の例外、

稀なケースというのはいくらでもある。

それは麦をすくおうとして手のひらから漏れた一粒かもしれないけど、

彼らに対しての救済措置というのも、考えてあげないといけないね」


これはフレドリック・マックスウェル弁護士が、

グッド・フレンドのケンに語ったグチのような、でも結構マジメなお話。

 

アメリカ留学ビザ 滞在費用

ビザの世界ではちゃんと文章に落として申請することが大事だ。

親が子供の留学費用を払うなんて当然だよね、

でもそれはちゃんと親がレターを書いて申請書類として提出しないといけないよ。

だって大使館も仕事だから常識ではかるのではなくて、紙になったものでしか判断できないから。

未成年がアメリカ留学ビザを申請するとき、費用の捻出先を明示することが必要だね。

それは本人名義の銀行の英文残高証明書が一番いいんだけど、

未成年が100万も200万も持っているわけがない。

だから通常は親名義の英文残高証明書とか、給与明細を添付するんだ。

そして、親から大使館に当てたレターを出そう。こんな文章だよ。

自分の子供だからって、親が出すのが常識だ、なんて考えちゃダメだ。

子供が可愛いならちゃんとカタチにしておこう。

 

 

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Embassy of the United States of America
Nonimmigrant visa section
Tokyo, Japan


Dear Sir/Madam,


I, xxx XXX(father), respectfully guarantee that I will pay

all the necesarry expenses regarding my legal son,

Mr.xxx XXX(son or daughter)'s study in your country.

Also, I will be responsible for all the action of Mr. xxx XXX(son or daughter)

during his/her stay in the United States.

I thank you for your kind consideration of this application

and look forward to your favorable response.


regards,


(sign)


xxx XXX(father)

 

アメリカ留学ビザ 目的

「今から考えるとわたし、よくアメリカ留学ビザ取れたな」

tokoは冗談まじりに笑った。


「だって、あの頃、19とか20の時にビザ面接なんてしたら

わたし、ヘンなこと言っちゃいそうだよ。

面接でビザ却下されてたかも!なんてね〜」


「大丈夫だよ、その年齢の申請者に詳しい目的なんか聞くもんか。

書類とお金があれば問題ないでしょ」

そうは言ったものの、tokoの言う心配事はもっともだと思った。


アメリカ留学ビザ、それはFの学生ビザであれ、

Mの専門学生ビザであれ、Jの交流訪問者ビザであれ、

一番大切な目的を答えられない人が多いのが実情だろう。

 

 

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「ケン、もちろんただ英語を学びたい、っていう理由だけじゃ弱いんでしょ?」


「弱いよ。日本の英会話スクールに通えばいい、って言われたらもう反論できない」

「そうだよね。なんか他の目的を立てなくちゃダメだよね。


でも実際あの頃なんて特に目的はなかったもん。

お金を出してくれる両親がいて、

新しい世界に飛び込みたかったからアメリカに留学しただけ。

そんな人が多いんじゃないかな」


「そうだね。まぁ9.11以前はそれでよかったけど、

もう留学=自動的にアメリカ、と考える時代じゃないからね。

他の安心な留学先もいくらでもある。


だから、きちんとアメリカに何を学ぶために行くのか、

そしてそれを日本に帰国した後でどう活かすのか、

それを説明しないといけなくなると思うよ、これからの留学ビザ申請者は」


わたしはそう言って言葉を閉じた。


昔は良い時代だったんだ、まだなぁなぁの世界で互いがある程度信用できた。

でも今はもう・・・。

 

パスポート番号 海外発行

信じられないものを目にした。

TEから始まる番号のパスポートなのに、なんと海外発行。

TZじゃないのに、海外発行のパスポートもあったんだ。

そのパスポートに目をやると発行地にLONDONとある。

この前、tokoにTZ/MZのパスポート発行地のことを話したばかりなのに、

そのルールから飛び出しているものがあるなんて。

ロンドン発行のTEを見つけてからわたしは色々調べて見た。

するとどうやら例外はロンドンのTEだけだということが分かってきた。

他のエージェントの知りたいに聞くと知っている人もいれば、まったく知らない人もいる。

現在存在するその例外のパスポートなんてすごく希らしい。

 

 

パスポート写真3.jpgパスポート写真3.jpg

 


まとめよう。

今は違うよ、でも2000年前後にロンドンの日本大使館で発行されたパスポートが

TEから始まる番号のものがあって、しかももうTEパスポートは失効しているものなのに、

2010年ぐらいまで有効なパスポートがある。

大半は機械読み取り式パスポートだからアメリカ入国も問題ないけど、

逐一見てゆかないと読み取り式かどうかは分からない。

TEで始まって有効なパスポートはロンドン発行なんだろうってことも

疑ってかからないといけないようなのだ。

――さぁ、このことをどうやってtokoに説明しよう。

別に悪びれることもないけど、先輩の見栄っていうか、やっぱり今知った、とは言えないもんね。

昔から知っていたような話にどうやってもってゆこうかな。

 

アメリカビザ種類

B1よりも H1Bが上で、

H1Bよりも L1が上で、

L1よりも Blanket L1が上で、

Blanket L1よりも E2が上で、

E2よりも E1が上?


マックスウェル弁護士はよくそんな笑い話をする。

アメリカビザセミナーで、企業担当者連絡会で、もう何度口にしただろう。

この話が飲み込めればビザの世界もよく理解できるんだ、と言っていた。

 

人の上に人なく、人の下に人なし。

そんな当たり前の考えを当てはめてみると分かりやすい。

ビザの世界はステータスじゃない。

どんなバックグラウンドを持って、どんな目的のために

アメリカに住んでいるのかを示すのがアメリカVISAのカテゴリーだよ。

アメリカで仕事なんかしたくないのに、就労ビザを取る人がいるか?

どうせ最長7年で本国に帰ってしまう企業内転勤者L1 workerと、

片道キップで退路を断ちながら働くH1B workerのどちらが一体本当に仕事をするのか?

 

 

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E1とE2は親企業の業務内容で大使館が勝手に決め付けたカテゴリーだけど、

2より1が良いなんてイメージの根拠は何?1万円と2万円はどっちが得だい?

怖いのは偏見と勝手な空想だよ。

噛み砕くように言うマックスウェル弁護士の表情がニコニコ笑っているから誰もが妄想、

自分の思い込みの愚かさに気付いてくれるんだ。


動物の世界でもクマ、シカ、ネズミ、

それぞれが生態系におけるそれぞれの役を担って生きている。

クマは生態系の頂点に立つけど一番偉いわけじゃない。

一見派手に見えるけど、土を、緑を育てているのは

もっともっと小さな微生物の力によるところが大きいんだ。

少し話がずれちゃったけど、アメリカビザの世界も同じで

カテゴリーでの優劣なんて有り得ない。


じゃぁ質問だよ!

ホオジロザメとジンベイザメはどっちが偉い?

L1ビザとE1ビザはどっちが偉い?

そこまで話した後で子供のようなイタズラな顔をしてみんなに聞く

マックスウェル弁護士のこと、なんて優しい人なんだ、と思った。

優しい?そう、優しいんだ。

無知による認識違いを分かりやすく解いてあげる、それはやっぱり優しい行為だよ。


「ケン、君のところでは駐在員がE2よりE1が良いと思い込んでいた、

という事例があると言っていたね?」

急にマックスウェル弁護士がわたしに話を振ってきたから、

少し動じつつもわたしも話を合わせようと焦った。


「そう、そうなんです。E1駐在員が他拠点のE2駐在員にビザシールを見せてE1の方が上!

なんて言っていたシーンを目にしたことがあります」

そう言うと周りの参加者たちがかすかに笑う素振りをみせた。

これだね、この反応だよ。

マックスウェル弁護士の顔を覗くと、「Ken, good job !」と言いたそうなスマイルが

こっちを向いていて、なんだか面白いセッションができたな、と我ながらおかしかった。

 





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