大阪アメリカ総領事館 行き方

ケンが大阪出張から帰ってきた。

提携しているビザ業者との打ち合わせと、大阪アメリカ総領事館の見学に行く出張だったの。

「ケン、どうだったの?早く聞かせてよ」

出張から帰ってきたばかりだから、メールを見るとか仕事の整理とか

忙しいと思ったから午前中は黙っていたけど、午後になって催促しちゃった。


「あ、分かってます、分かってますってば。

リクエストの大阪名物・たこ焼きはちゃんと買ってきたから」


――違う。そんなのじゃない。わたしは思わず知らん顔しちゃった。

「あ、大阪の街はね、びっくりしたのがエスカレーターは右に立つのが常識なんだって。

左は急いでいる人のために空けておくそうです。東京の逆なんだよ」

いらない知識だったけど、初耳だったからちょっと食らいついちゃった。

「そうじゃないでしょ〜!領事館よ、領事館。どんなカンジだったの?行き方教えてよ」

「あーあー、それね。逆にそっちの方ね」

すっごくわざとらしい。分かってるくせに。大体、何の逆?


「新大阪駅に御堂筋線っていう地下鉄が走っていて、それで4駅目の淀屋橋駅。

1番出口を地上に上がると、右手に橋が見える。

それが淀屋橋で、その右方向に広い道をずっと歩くんだ。

橋を過ぎると右手に大阪市役所がある。

それから頭上に名神高速がかかっているのを過ぎて、あとはひたすら道を真っ直ぐ。

駅から10分は歩かないかな。

道が二股に分かれるけど、右の道のすぐに沢山の警備が見えてくる。

それが大阪アメリカ総領事館さ」


「道順は分かりやすい?」

「大丈夫。ちゃんと1番出口で出て、右にさえ歩いていけば真っ直ぐだし、

大阪アメリカ総領事館の周りには特有の雰囲気、警備の物々しさがあるからすぐ分かる」

「東京アメリカ大使館の場所とは違う雰囲気かな?」

「ちょっと違う。東京アメリカ大使館はまるでひとつの城のように場所を構えているけど、

大阪アメリカ総領事館は街中に立っているひとつのビル、って感じだ」


「東京アメリカ大使館と、大阪アメリカ総領事館、どっちが好き?」ってわたしがふざけて聞くと、

「どっちも好き。それぞれの個性を尊重。僕と君の個性も同様に大事!」ってケンは言った。

やっぱりわたしとはちょっと違う人間なのね!あははっ!

 

パスポートカバー

「パスポートカバーなんて付けてるのって日本人ぐらいでしょ。

他の国の人たちがパスポートカバーを使っているところなんて見たことないわ」


ずっと昔から、わたしは気になっていた。

ほら、空港の出入国審査場で「パスポートカバーを外してください」って書いてあるヤツ。

あんな親切な案内って日本だけだよね。


今のパスポートはバーコードがついていて、機械でデータ読み取りができる。

だからパスポートカバーなんて付けていたら、肝心のバーコードが読み取れなくてダメ。


そもそもパスポートの表紙ってちゃんと厚紙になっているから折れるわけじゃないし、

毎日持つものでもないので汚れることもないでしょ。

日本の出入国では毎回取らなくちゃいけないし、

なんでパスポートカバーをしているのか、ホントわたしにはよく分からなかった。


2006年の3月に日本のパスポートがIC旅券に切り替わった。

この時、初めてIC旅券の現物を手にしたケンが驚きの声を上げたていたのを覚えている。


「ね、旅子!大したものね、外務省さんも。

見て、これ!新しいパスポートは、表紙の裏がデータ面じゃなくなったよ。

これならここにパスポートケースつけてもデータ面が読み取れる。

日本の出入国でわざわざパスポートケースを取り外さなくてもいいんだよ」


確かにIC旅券はその通り。

パスポートカバーのかかる表紙の裏はただの紙で、

データ面は次のページから始まっているので、パスポートカバーはそのままでも良い。


「すごいね、ケン。これってパスポートの仕事に携わる人たちが不便さを感じていて、

改良したいっていう声が集まって、実行に繋がったのかな。

毎日毎日パスポートのカバーを外せ、とか言うのも面倒だしね。

お役所とか官僚とか言われている人たちのそんな工夫、普通はは誰も気にしなくても、

わたしたち旅行業界人ぐらいは気付いてあげても良いのかも」

「そうだね、小さくても工夫は立派」


物を大事にする日本人の文化かしら。

ひょっとしてこのIC旅券スタイルが世界の主流になって他国もマネをし、

他国の人たちもパスポートカバーをつける日がいつか来るのかもしれない。


・・・って一瞬感じたけど、やっぱりそんなのあり得ないよね。

ご丁寧なパスポートカバーなんて日本人だけの発想でしょ?!

海外とか国境という概念が日本よりは明らかに薄い人たちにとって、パスポートは日常だ。

日常だから、裸でパスポートを持つのだろう。

他国からするとヘンだな、と思うパスポートカバーだけど、それはそれで面白いとわたしは思ったよ。

 

 





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