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ヨセミテ国立公園キャンプサイト 見習い芸術家の冒険27話

投稿日:1996年9月18日 更新日:




9月18日(水)

  午前5時、ロサンゼルスのディーポに着いた。ロサンゼルスのディーポは治安面で非常に評判が悪い。確かに車窓から眺める限りあまりしっかりした服装の人が歩いていない。これは恐いぞ。ディーポから出ないに限る。ロサンゼルス程の大都会だから市内に幾つかディーポがあると思うのだが、着いたのはかなり小さく、田舎町のディーポと大差のない大きさだ。

  外には一歩も出ず、ディーポ内で食事をしてローカル路線のマーセード行きを待った。7時に出発したのはいいが、これがまた本当のローカルバスで小さな町を周りに周るのでマーセードへ着いたのは午後の3時だ。大した距離はないはずなのに、おかしいなぁ。さすがにバスで眠り続ける生活は疲れたよぉ!

マーセードではぎりぎりでヨセミテ行きの最終バスに接続できた。これを逃していたらまた一日損をする所だった。ヨセミテ国立公園のゲートシティ・マーセードからバス(往復$33)を乗り継いで山道と谷間を進むこと約3時間、僕は遂に最後の冒険地・ヨセミテ国立公園へと辿り着いた。

  カリービレッジという所でバスは止まり、僕はとりあえずその周囲で情報収集にかかった。初めての場所では情報収集が大切だ。でも、この国立公園はまず安心だ。ヨセミテを訪れる観光客はグランドキャニオンに次いで多い。人が多ければそれだけ設備が整っているはずだから、という理屈だ。

公園内に美しい所は色々あるが、危険というか、余り特殊なものの噂は聞かない。サンフランシスコ・ロサンゼルスという大都会からのアクセスがいいので一日観光ツアーとなっている国立公園だ。キャンプサイトの予約も今夜から2泊入っているし、今までの冒険を考えれば、割と油断のできる場所だと思う。この1ヶ月の経験を活用すればどう見ても大丈夫でしょう!

  園内の主な場所を無料シャトルバスが周っている。グランドキャニオン並みの便利さだ。さぁ、ここで僕はどんな冒険をしよう。まだ全く決めていない。実際の所ここではこれがしたい、というものが何もない。到着してから何をするか決めようと思っているぐらいだ。

  今日はもう6時を回っているので、とりあえず予約を入れていたUpper Pinesのキャンプ場へ向かうためシャトルバスに乗った。だが、入口へ行くともうレンジャーは帰ったのか不在だった。窓口にあった電話番号にかけて、自分のサイト番号を聞き出す。僕が元気にサイトへ歩いて行くと、隣のサイトのファミリーはとってもフレンドリーに話し掛けてきてくれた。こんな嬉しいお隣さんは初めてだ。

  サイトにはクマ対策の食料入れがあった。イエローストーンで見た以来でちょっと懐かしい。荷物を降ろし、テントを張ったら腹の虫がぐぅ~っと鳴ってきた。シャトルバスでビレッジへ行き、ジェネラルストアを見つけてたっぷり食料を買い込んだ。いつも通り肉とか冷凍食品とかの余り手がかからない食べ物ばかりだけどね。サイトへ戻り、適当に火を通して腹に詰め込んだ。

さすがに丸2日間の移動で身体は疲れていた。食事を終える頃には辺りもすっかり暗くなっていた。ふとキャンプ場の空を仰ぐと、森と森の切れ間から満天の星が見えた。大きな木製のテーブルに大の字に寝転がり、僕は夜空を見上げる。

音のないキャンプ場では、ふかす煙草の軋む音までが耳に入ってくる。ここはこの冒険旅行最後の土地、ヨセミテ国立公園だ。8月の23日にシアトルを出て以来、僕は幾つもの冒険を夢中でこなしてきた。どうやら、それもこの場所で最後らしい。でも、僕にはその実感が全くないんだ。

きっと、ここが終わってもまた次の冒険の土地がある。どうしてもそんな考え方に傾いてゆくよ。ヨセミテ国立公園よ、あなたがもし本当に最後の挑戦者だとしたら、どうぞ最後ぐらいはお手柔らかにね!

  次の日の予定も立てぬまま、僕は寝袋に入って眠りに就いた。手足を伸ばして横になれることの嬉しさといったら格別だね!







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