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デンバー造幣局・コロラド歴史博物館  見習い芸術家の冒険12話

投稿日:1996年9月3日 更新日:




今日は兄貴の誕生日だ。やはり何もしないが、忘れることはない。元気でやっているだろうか。弟は元気に冒険旅行をしているぞ。

  7時に起きてグレイラインツアーに電話をかけると、当日の受付は駄目なんです、と撥ねつけられた。明日の8時30分にバスディーポに集まってね、と言われてちょっと迷ったが、やはりもう一日ここに滞在する覚悟を決めた。デンバーか、思わぬ長居が続く街だ。明日も含めれば合計で5日もデンバーとロッキーマウンテン国立公園のために費やすことになった。車があれば2日とかからないのになぁ。これもALL BY MYSELFの裏で、仕方のないことか。

  今日は改めてデンバー市内観光をすることにした。デンバーに到着した最初の日には閉っていた、あのデンバー造幣局へ行ってみる。9月2日から再開していたので、皮肉にも長居のために見学できることになった。あの最初の日は予想もしていなかった展開だ。

入口で金属探知器のボディーチェックを受けて中に入ったが、僕はそこで何の価値も見出すことができなかった。ただの金属のクズと化した硬貨の山を見た。お金も工場で作られている所だけを見ると全然有り難くない。感動はなかったので早々に立ち去った。

コロラド歴史博物館で西部劇の遺品を眺め、時間が余ったのでデンバー図書館の立派な設備を冷やかしていた。時間はまだまだ余っていたのでサクラスクウェアという日本人町を物色し、そのうち陽射しの強さに目眩がしてきたのでユースホステルへ戻った。

  ソファーでポーを読みつつ、ゆっくり身体を休めていると、一人のアジア系の若者が隣のソファーに座ってきた。日本人かなーと思っていたら、その人が話し掛けてきた。やはり日本からの旅行者で、そのうちもう一人彼の連れがやって来た。今日は本当に暇だったので、我ながらよく口が回るなーと言う程その二人連れと話し込んでいた。アメリカに着いてまだ日も浅い人たちだったから、留学生という立場から色々と偉そうにアメリカをレクチャーしていた。ついでに自分が好きな日本のミュージシャンたちの最新情報などを聞き出した。

  二人は21歳以上だったので、近くのスーパーへ一緒に行き、ビールを買ってもらった。

なんだか4日前にも同じようなことをしたな。部屋に戻って飲みながら話の続きをしていると、なんと二人も明日同じツアーに参加する予定だと分かった。

しばらくして帰ってきた同室のオーストラリア人のおっさんも話に参加してきた。なんでもあのグランドキャニオンの谷底を歩いてきたと言いやがる!おぅ、そいつはこの俺様が何日か後にする冒険だぞ!嬉しいねぇ、仲間がいて。彼は会社のボスに2ヶ月バカンスをくれ、と言ったが断られたそうで、仕方なく1ヶ月の休暇にしてやった、と不満そうにぼやいた。仕事をしている人が1ヶ月間休むと聞くだけで日本人の僕は驚くのに、彼は1ヶ月では全然足りない、と不満そうな顔なのだ。なんだか、世の中には色々なことがある。僕の世界は世界のようで世界ではない。

それにしても、昨夜とはまるで違う夜になったものだ。夕方から夜遅くまで大いに飲み、大いに語り、僕は上機嫌でベッドに入る。毎日石は転がる。今日、上になったその面は表か、裏か。めくるめく冒険、廻って廻って僕もきっとこの冒険旅行を終える。

やはり冒険旅行は自分自身だけが最良ではないよ。なんでもありのこの冒険旅行、色々試してみたいと思う。できる限り、色々な人とも話してみたい。ほら、その気になれば昨夜あれだけ羨ましがったことが今夜は現実のものとなった。この冒険旅行ならば、できないことは本当にないのかもしれない。まだまだ見知らぬ感動が僕を待っている。さぁ、明日の冒険を楽しみに今夜はここで眠りに就こう。







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