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宿の当日割引、宿泊業界の商品は在庫が抱えられない宿命

投稿日:2011年10月1日 更新日:




当日割引の宿に儚さを感じて、わたしは涙もろくなっていた。

だって、宿泊業界の商品である宿は、在庫が抱えられなく、明日になれば消えてしまう存在

泡雪のごとく、霧雨のごとく、現実の姿が見えない、もろいものだから。

 

今夜のお客さんがつかなかった宿の部屋は、

主を欠いたまま、音のない夜を過ごさないといけない。

 

宿の経営者としては、販売できなかったことで一銭も収入がなく、稼働率が下がるダメージ。

感傷的なことを言えば、せっかく宿泊客のために飾り揃えた宿が、

そのまま使われずに一夜を過ごさないといけない寂しさ。

いつか、技術の革新があれば、今夜の空き宿が、明日の在庫となりうるのだろうか。

いいえ、こればかりは代用が効かないもの。

 

 

 

そしてわたしは当日割引の宿という新商品に力を注ぐようになっていった。

どうせ暗闇の中で過ごさせてしまう空き部屋を、どうにか明るい人の声で埋められないか。

もちろん儲けのことも考えてだけど、稼働率を上げるためなら、若干の割引なんて厭わない。

宿泊日の直前なら、もう通常ルートで宿泊予約が入るわけもないから、

思い切った当日割引を設定してみる。

 

この当日割引の宿は、思わぬ成果をあげることになった。

正直、ウチの宿では当日割引には50%割引という無謀なサービスをつぎ込んでみた。

それはひとえに、稼働率を上げて賑やかな宿にしたかったからという理由で、

別に当日割引のお客様が利益になっているわけじゃない。

でも、払ってくれる宿泊代は、宿の従業員たちの人件費をペイしてくれたし、何より宿が人で埋まって活気が出た。

すると、宿の口コミサイトではウチの宿が、

賑やかでサービスの良い宿だということで評判になって、当日割引以外の通常宿泊客が増えたんだ。

ありがたいことね、当日割引の宿。

なにかきっかけがあれば、あの稼働率に苦しんで無音が続いた宿が、

宿泊客で埋まり、収支も稼働率も上がる宿になる。

当日割引の宿に力強さを感じて、わたしは涙もろくなっていた。
 







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