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ブラジル人、アメリカの空港乗り継ぎでも、アメリカ通過ビザが必要

投稿日:2010年1月28日 更新日:




「それでかわいそうなことになったのが、ブラジル人の方々だ」

 

そう言われて、わたしはコーヒータンブラーを持つ手を止めた。

 

ケンに言われるとよっぽどのことがあるんだな、と薄々感づくようになっているから。

「そうしてアメリカは全外国人に入国時の指紋採取と顔写真撮影を義務付けたよ。

 

この生体認証技術の導入によって、指名手配中の犯人が数千人単位で捕まった、というプラスのことはあった。

 

でもマイナスのことがね、まずは入国時にかかる時間のロストのことを考えれば

 

物凄い損失になるのだが、もっと目に見える反応をしたのがブラジルなんだ」

 

気が向いたから3時のコーヒーをケンにも入れてあげて、

 

またわたしがしつこくアメリカビザの難しい質問をしていたら、話がこっちにそれてきた。

 

「いい?ブラジルから日本に来るときに一般的なルートはアメリカ経由なんだよ」

 

「ってことは、アメリカがトランジット客もすべて入国する、というルールを作ってしまったら、

 

まさかブラジル人はみんな入国?まさかビザがいるの?」

 

「そうなんだ。ブラジル人だけじゃないよ、

 

南米やメキシコの方々もアメリカを経由する限りはビザが必要だよ。

 

ブラジルは日系人が多いから、これは深刻な問題になった」

「アメリカを通らないルートはないの?」

 

「ヨーロッパ経由だね。ただ、料金が高くなる。それも数万円単位で高くなるからあまり賢明な方法ではないんだ」

 

「それはかわいそうじゃない。ビザなんか取れるのかな?」

 

「ちゃんと申請すれば取れるけど、トランジットビザというアメリカビザのカテゴリーはC1ビザになるね」

「もちろん面接ありでしょ?」

「あぁ、それもかわいそうだ。時間もそうだけど、金銭的なデメリットが大き過ぎる」

 

「ちょっと聞くに堪えないお話ね。アメリカの言い分も分かる気はするけど」

 

「toko、すごいのはブラジル側の反応なんだ。

 

報復措置として、ブラジルに入国するアメリカ人に限り、やはり指紋スキャンと顔写真撮影を義務付けた。

これでアメリカ人だけが、入国の際に長蛇の列を作ることになったんだ」

 

「思い切ったわね!それもアメリカ人だけ、なんて露骨な報復じゃない」

 

「それにビザ料金もアメリカ人にだけ高くした。ブラジルは怒ってるんだよ。

 

これは僕がずっと恐れていた負の連鎖、報復のビザルールだけど、

 

一石を投じる意味ですごく大事なことなのかもしれない。

 

だって、全員が面接の上にビザを取るなんて本当に迷惑なお話なんだしね」

 

「でも。。。世界中に広がらなければいいね、そういう報復とか仕返しとかが」

 

わたしもしんみりコーヒーをすすりながらそう言うと、

ケンは机の中から美味しそうなチョコレートを出してきてわたしにくれた。

 

「そうだよ!・・・で、なんでこんな話になったんだっけ?」

とぼけて言う。

 

「だから、JL048便でニューヨークで1ストップしてサンパウロに入るケースは

 

アメリカに入国するの?ってわたしが質問したんでしょ」

 

「あぁ、そうでしたね。荷物は受け取らなくてもいいけど、入国は必須なんだ。

そうでした、そうでした。まぁ、まぁ、そのチョコレートでもどうぞ。

ベルギー帰りのお客さんからもらった美味しいやつです」

 

ケンはそんな感じで話を明るくまとめていったけど、

 

アメリカビザへの明らかな報復行為が行われている、と知ってわたしの心は暗くなった。

 

互いを信じる良い心なんて、現実の世界ではまだまだ先なんだと知ってしまったから。

 

 







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