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ブランケットLビザ、アメリカビザ種類で最も信頼あり?

投稿日:2010年1月28日 更新日:




「じゃぁ、ブランケットLを取るのが一番じゃない!」

僕がアメリカビザの種類を説明しているとtokoは「わたし、分かりました!」という表情をしてそう叫んだ。

「そうだよ、ブランケットLが取れるなら一番いい」

何か気にしておかないといけないこととかあるの?

EやノーマルLと較べて申請が難しいとかあるとか?」

 

面白いと思った。

まだアメリカビザを勉強中の彼女がEやLという言葉を操っている。

「唯一、ブランケットLは追加で500ドルも収めない、といけないというルールがあることぐらいかな。

お金の問題。あとは申請条件さえ満たしていれば何の支障もない」

「条件!その条件を教えてください。知っておかなくちゃ」

こんな時尋ねてくる彼女の表情はスポンジみたいに吸収しそうというか、

すごく知りたいんだな、という顔をする。だから僕もいくらでも教えたくなるのか。

 

「細かくは沢山規定があるけど、重要なのは、そうだな、

最近3年の間に最低1年はその日本の会社で働いた実績がないといけない、ということかな」

「1年。普通に考えれば大丈夫ね。どういう場合がダメなの?」

そうだよ、その言葉の奥まで気にする気持ちが大切だ。

彼女はよくそれを分かっている。

「例えば、転職してきたばかりでいきなりアメリカの子会社に派遣させようとしてもダメだ」

「あ~なるほど。でも会社がギャランティーするから良さそうなものだけどねー」

「いや、問題はLが企業内転勤という性質を持っているってことさ。

一時雇用のHとの違いを考えないといけない。

Lは同グループ内での転勤という信頼性で成り立っているから、

いきなり入ってきた人間をLでアメリカで働かせるわけにはいかない」

「なるほど。合理的なアメリカビザルールだもんね」

tokoはこの合理的なという言葉をすっかり気に入ってしまったようだ。

教えたのは他でもなくこの僕なのだが。

 

「ケン、他には難しいことはないの?」

「あとはね、そのI-797にリストアップされた会社の中での異動が対象であって、

グループ会社といってもリスト外の会社はダメってこと。

例えばインハウスのウチの会社は親会社とまったく職種が違うから

ブランケットLでのグループ会社として認められることはない。

僕がアメリカに行こうとしてもLは取れない」

「うん、うん。ノーマルLでもブランケットでもダメね」

「ダメだ。あとは、一度Lの上限、L-1Aの7年、L-1Bの5年に達したら

次にLを申請できるのは日本に帰ってきて1年以上しないとダメ、ということ。

これも覚えておこう」

「えぇと、長くアメリカ駐在していた人が日本に帰任して

またすぐにアメリカに行こうとするパターンかな。そんなのあるの?」

「まずないけどね。そういうルールも全部がアレだよ、ほら、アレ?」

そう振るとtokoは楽しそうな笑顔で言う。

「合理的なアメリカビザだから、ね?」

こういう教え方なら覚えてくれるのもすぐだろう。

ルールをルールだけじゃなくて理由立てて教えなければ人の頭の深いところにはいってゆかない。

 

「質問があります、ケン先生」

「気持ち悪いな。toko先生、どうしましたか?」

我ながら仲良さそうに教えてる、って会社の周りから思われてるんだろうなぁって思った。

「ビザ申請前に1ヶ月とか2ヶ月とかアメリカに出張しちゃったらどうなるの?

その1年ってこのルールにはどう適用されるんですか?」

「おお、さすがは優秀な生徒。いい質問です。でも答えはやっぱり合理的なアメリカビザの中にある」

「ダメなの?まさかカウント外とか?」

「そう。海外出張の期間は1年の中にカウントされないよ。

そんなつまらない抜け道を作るわけないじゃないか、あの移民法が」

 

tokoはわたしが作ったアメリカブランケットLビザのマニュアルをじっくり読み返し始めた。

わたしは次の質問がいつ来るのかと内心楽しみにしながら彼女の横顔をちらちらと窺う。

・・・それにしても。

tokoの勉強熱心ぶりは嬉しいものだな。

いずれ僕のこのマニアックな知識も誰かに引き継がなくてはならない。

一生この就労ビザ担当ばかりをするわけにもゆかないだろう。

今まで僕が一人で貯めこんできた知識を経験を

この勉強態度ができるtokoに伝えられる、というのはとても幸せなことだ。

多くを僕は求めない。人だから短所はあるものだ。

そんな細かくはこだわらず、ただ、人に聞く姿勢というものがこんなにも大切なんだな、

ということをtokoというまだ若いこの女性の存在で僕は改めて知らされた。

アメリカの就労ビザなんてもの、普段の生活にはまったく接点がないもの。

だけどそれにも興味を出して学ぼうとするtokoのひたむきな姿勢に、僕は惜しまず全てを彼女に残そうと思った。

ほら、またtokoがこっちを向いた。わたしまだ納得していません、

という意志の強い表情に、知的好奇心が丸出しだ。

教えてあげるよ、ほら、僕のすべてを伝えてあげる。

「ケン、これはどうなの?どうしてI-129Sって書類は3部作るの?」

「あぁ、それはね・・・」

 

アメリカビザ写真1.jpg

 

「B1 in lieu of H3というビザカテゴリーがある。

これはほとんどお目にかからないが、とある企業の研修生でアメリカの提携先に

研修に行く際にそのビザが発給されたことがあったな」

「in lieu ofってことは、B1商用ビザだけど、H3研修の代わり、っていうことでしょ。

トレイニーのH3ビザとの違いは何なの?」

「toko,じゃぁ仮にあなたがそのビザ申請者だとしよう。

研修だから就労ではないね?

それと、Hビザは現地企業からお金を貰うビザじゃないか。

すると、H3ビザは当てはまるかい?

 

当然、研修なんだから提携先からはお金はもらわないよ。

逆にお願いして勉強させてもらうんだ。お金は日本の親会社が払う」

「ダメね。そう言われるとH3じゃない。

就労じゃないからLでもEでもないし、あとは商用のBビザしかないわねぇ」

「だろう?でも普通のB1で事足りるかな?

Bビザは企業の打ち合わせが該当だよ?」

「打ち合わせ、ではないわね。

ふぅん、本当に一番いいビザカテゴリーがないじゃない。

あとは留学ビザはどうなのかな?

でも米国の会社に行くんだからI-20ABとかDS2019なんか発行されるわけないか。。。。

ダメだね、この線も」

「そうなんだ。こういう企業研修生のケースは思い切って金や勤務場所の問題を

棚上げにしてL1にするかH3にするかにしないと解決できない。

まともに目的や事情を説明して発給されたのが、このB1 in lieu of H3という新しいカテゴリーなんだ」

「でもこのビザって完璧じゃない?

B1だからお金は日本側で払うし、H3としてはっきり書かれているから目的も明確だし。

あとはアメリカビザにはそもそもそんなカテゴリーないってことが問題ね」

 

「そうだよ、toko。いずれは淘汰されてしまうビザカテゴリーだと思うな。

こういう稀なケースのことも頭に入れておくともっとビザの知識が膨らんでゆくよ」

そう言ってケンが笑う。

その膨らんだ豊かな知識を元に教えてくれる先生のように、わたしもいつかなれるかな。

でも、日常生活ではこんな特殊な知識使わないと思うけどね。。。。


 

ビザって、どんな小さな企業でもアメリカに投資さえしていればいいの?

企業の大きさとかは関係あるのかな?」

そう言われてわたしは困った。

tokoの指摘は毎回的を得ている。

わたしの知識不足のせいだろう、充分に答えられない時もあるのだから。

「数字として、何万ドル以上ってのはないよ。

ただ言えるのは、アメリカに相当額の貿易や投資をする企業ってこと。

つまりね、自分の所得だけのためにアメリカに会社を立ち上げたとしても

それは投資や貿易とは見なされないからEビザの適用外だ、ってこと」

「あー、分かりました。

自分ひとりとか、家族経営の企業とかで生活費ぐらいしか利益を期待していないのに、

これがアメリカへの投資だっ!って言ってもEビザはおろしてくれないのね?」

「そうだよ、そういうこと。

それは僕だってアメリカに投資して有限会社Ken LLCでも作ってEビザを取りたいけど、

そんな小規模の会社じゃぁEは取れない」

「わかったー。わかったー。よくわかったー」

そう言ってtokoは自分の仕事を続け始めた。

ほっと胸をなでおろすわたし。

アメリカビザのことは、この実務担当者の立場からだけでも分からないことだらけ。

弁護士、移民局、ビザ申請者、他色々な立場から勉強しないと

ちゃんとした答えができるものじゃないから。

アメリカビザ写真4.jpg

「toko, LビザとEビザの違いが明確に言い当てられるかい?」

ケンにそんな難しい質問をされて、わたしは困った。

「ムリです、よく分かりません」

どうせダメだと思って、即答でそうギブアップすると

ケンがにっこりと微笑んでこう言った。

「正解!それでいいんです!」

「なにそれ?!からかってるぅ?」

ちょっと馬鹿にされたカンジがしてそう反抗すると、

やっぱりケンはマジメな顔で続けてくる。

「いや、本当に。LとEはね、僕も実は明確には違いが分からない。

多分誰もはっきり区分けはできないと思うんだ」

「そうは言ってもお客さんにも説明しないと困るでしょ?

じゃぁ、ケンの理解でいいから教えてよ。分かる範囲でいいからさ」

そこまで譲って逆質問すると、ようやくケンが教え始めてくれた。

 

「Lってのは企業内転勤者ビザ、つまり世界中の同グループ内での転勤さ。

転勤だから一時的なものでね、最初は3年のビザ、最長で7年しかない」

「はい。それは分かるんだ。転勤者ね。分かりやすいよ」

「Eでしょ、問題は。Eは投資家のビザだよ。

簡単に言うと日本の企業がアメリカに投資をする。

お金を投資して、アメリカに自分の子会社をたてる。

その子会社を育てていくのはもちろん大切だよね。

その過程で、日本の企業なのだから日本人の社員をアメリカに派遣するのは当然だ。

それは投資家としてしっかりと影響力を保ち子会社を経営してゆく、という目的があるね。

この目的のための派遣されるビザをとる人がEビザの申請者なんだ」

「うん、そっちも分かった。個々は分かるんだけど、

実際、駐在員を出すときはどう判断すればいいのかな?

転勤っていえば転勤だし、投資っていえば投資。そこが分かんない」

「あはは、実は僕も分からないんだ!」

あっさりとケンも言ってのけた。

「だからそこを教えてよ!ケンが分からなくちゃ、誰も分からないよ!」

「まぁね。だから曖昧なんだ。LでもEでもいい。

アメリカで役員クラスのトップマネージメントに就く人がEビザであったほうがいいのは、

投資という面からはっきりしているよね。

でも彼らだってLでダメなことはないんだ。

実務担当者はLのほうがいいけど、日本のやり方をアメリカで

ゼッタイに徹底するのが経営の基本、ということだったらEビザとしてでも考えられる。

要は答えはないんだよ、やっぱり」

「なるほどねぇ。そこまで考えての答えなしなら納得しました。もういいです」

わたしはそれ以上の答えはいらないと思った。

線引きできないものも世の中にはあるよ。

それにこだわっていても、明日が見えてこない。

曖昧なものを残すのも、将来に繋がる永遠のミステリーさ。

だからケンも答えを出せないこと、それはそれで正解だと思ってよ。


 

「ビザの世界は本当にややこしい。

僕らのような実務的な話なんて小さいもので、大局を見れば政治的なもの、

経済的なもの、そういうものが根底に流れている」

ケンとマックスウェル弁護士が話している内容はいつも難しい。

楽しいランチタイムに話すことじゃないのに?とも思うけど

きっと二人にとってはこの上なく楽しい話題なのかな。

他の男の人たちがスポーツの話をするように、

女の人たちが昨夜のテレビの話をするように二人は楽しんでいるのかな。

「ケン、聞いたかい?マイクロソフトのビルゲイツ会長が連邦議会で

発言した内容のひとつにH1B発給数上限を廃止して欲しい、ということがあったようなんだ」

「それは聞いてなかったね!なんか凄く説得力のある話じゃないか」

顔を高揚させてケンが口を開く。

「そうなんだな。

我がアメリカは移民の国だから外国からの優秀な人材を獲得することは

最重要項目のひとつだと思う。

まぁ、これは日本も同じだと思うけどね」

「2006年のH1Bビザ発給は65,000でこれは毎年4月に

スタートした途端にすぐにいっぱいになってしまうね。

アメリカで働き、暮らし、そして税金を払いたいという外国人はいくら優秀であっても、

一年もの時間を待たないといけないんだ」

「あぁ、アメリカの大学で修士号を取った人や、すでにH1Bを持っている人の延長申請は

その枠外というルールはあるにしても、実際その枠は狭すぎると思うよ」

「だろう?それはねぇ、国内失業率のことや国際競争力だとか政治的・経済的、

それに軍事的な大局はあるにしても、やはりひずみが出ていたんだな。

それもビルゲイツ氏のような発言力のある方が言うのだから余程のことなんだよ」

「ビザの世界は知ったつもりだったけど、

我々の知らないところでアメリカビザの問題があったっていうことか」

「そうだよな、安全で優秀な外国人はいくらでも歓迎するべきなんだ。

それを政府が一律のルールで発給上限数を決めてしまうのは

政治的な側面からはよしとしても、経済の停滞を引き起こしかねない。

H1Bを発給されるような人物であれば

何万人アメリカに来ようがアメリカの国益を損ねないんだ」

アメリカ大使館近くの虎ノ門の焼鳥屋さん。

頼んだ焼鳥丼が出てくる間に、そんな濃いことを話して二人は

わたしのことをすっかり忘れてしまっているみたい。

ダメね、二人とも。

実務面から、学者面からばっかりビザを見ているから

彼らにだって気づかないことだってあるでしょ。

ビルゲイツ氏の言葉になんだかショックを受けているみたいだ。

「そうよ!」自分の知らない角度っていくらでもあるものでしょ!」

たまには二人に小言を言おうとわたしが口を挟む。

「そのH1Bビザのこともそう。

例えばね、H1BとかH3とか暗号みたいな言葉ばっかり使って

マニアな世界で遊んでいないでもっとシンプルな言い方、一時就労ビザとか

追加ビザ申請書とかもっと普通の名称にしたほうがいいと思うけどね!」

そう言うわたしの横で店の人が

「Cランチお待たせしました!」

と元気よく言うので、つい、わたし

「は~い、焼鳥丼と鶏ガラスープのセットですね!」

とコード化せずに言い直したらケンとマックスウェル弁護士が

難しそうな顔をして苦笑いを浮かべていた。

アメリカビザ写真3.jpg

B1よりも H1Bが上で、

H1Bよりも L1が上で、

L1よりも Blanket L1が上で、

Blanket L1よりも E2が上で、

E2よりも E1が上?

マックスウェル弁護士はよくそんな笑い話をする。

アメリカビザセミナーで、企業担当者連絡会で、もう何度口にしただろう。

この話が飲み込めればビザの世界もよく理解できるんだ、と言っていた。

人の上に人なく、人の下に人なし。

そんな当たり前の考えを当てはめてみると分かりやすい。

ビザの世界はステータスじゃない。

どんなバックグラウンドを持って、どんな目的のために

アメリカに住んでいるのかを示すのがアメリカVISAのカテゴリーだよ。

アメリカで仕事なんかしたくないのに、就労ビザを取る人がいるか?

どうせ最長7年で本国に帰ってしまう企業内転勤者L1 workerと、

片道キップで退路を断ちながら働くH1B workerのどちらが一体本当に仕事をするのか?

 

E1とE2は親企業の業務内容で大使館が勝手に決め付けたカテゴリーだけど、

2より1が良いなんてイメージの根拠は何?1万円と2万円はどっちが得だい?

怖いのは偏見と勝手な空想だよ。

噛み砕くように言うマックスウェル弁護士の表情がニコニコ笑っているから誰もが妄想、

自分の思い込みの愚かさに気付いてくれるんだ。

動物の世界でもクマ、シカ、ネズミ、

それぞれが生態系におけるそれぞれの役を担って生きている。

クマは生態系の頂点に立つけど一番偉いわけじゃない。

一見派手に見えるけど、土を、緑を育てているのは

もっともっと小さな微生物の力によるところが大きいんだ。

少し話がずれちゃったけど、アメリカビザの世界も同じで

カテゴリーでの優劣なんて有り得ない。

じゃぁ質問だよ!

ホオジロザメとジンベイザメはどっちが偉い?

L1ビザとE1ビザはどっちが偉い?

そこまで話した後で子供のようなイタズラな顔をしてみんなに聞く

マックスウェル弁護士のこと、なんて優しい人なんだ、と思った。

優しい?そう、優しいんだ。

無知による認識違いを分かりやすく解いてあげる、それはやっぱり優しい行為だよ

「ケン、君のところでは駐在員がE2よりE1が良いと思い込んでいた、

という事例があると言っていたね?」

急にマックスウェル弁護士がわたしに話を振ってきたから、

少し動じつつもわたしも話を合わせようと焦った。

「そう、そうなんです。E1駐在員が他拠点のE2駐在員にビザシールを見せてE1の方が上!

なんて言っていたシーンを目にしたことがあります」

そう言うと周りの参加者たちがかすかに笑う素振りをみせた。

これだね、この反応だよ。

マックスウェル弁護士の顔を覗くと、「Ken, good job !」と言いたそうなスマイルが

こっちを向いていて、なんだか面白いセッションができたな、と我ながらおかしかった。







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