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日本型ファシズムの特質・天皇制、軍部が政治主導権を握った要因

投稿日:2010年1月28日 更新日:




日本の軍部が政党にかわり政治の主導権を握った要因が、

日本型ファシズムの特質にあるということに着目してみた。

日本ファシズムが中国・朝鮮の抗日運動への対抗策であることと、

アジアでの植民地拡大のためということ、そして第二次世界大戦の戦争を

遂行させるために必要なものとして軍部により意図的に喧伝されたという事実も

忘れてはならないが、それ以前にどうして日本国民に割合抵抗なく

この日本ファシズムのシステムが受け入れられたのかに注目しなくてはならない。

それは日本ファシズムが、天皇制を基本とする天皇制ファシズムであった

ということが最大の理由ではないか。

遡れば、明治維新以来、天皇が発した詔勅が神武天皇以来の神皇に触れ、

天皇の絶対的権威・神秘性を高めんがために

皇室の神話的性格を強調したことにたどりつく。

国家神道の形成は自由民権運動の高揚に対抗する

国家の支配的イデオロギー政策の重要な一環であった。
基盤の弱い明治政府が、大衆コントロールのために取った政策である。

「軍事勅論」によって日本軍隊は「皇軍」の理念確立がなされる。

この流れで日清・日露戦争が進められていったのであり、

日本国民の意識に「戦争は天皇の名においてされるもの」というものが根付いてゆく。

韓国併合の条約が天皇の名においてなされたように、

この意識統一の流れは深く日本国民に浸透していった。

何故日本ファシズムが民衆の抵抗によって、イタリアやスペインのように
政権を打破するまでに高揚しなかったのかという疑問も、

日本の場合は道徳上侵してはならない天皇を頂点とする

特有のファシズム形態であったが故に国民の活動が自制された、という考え方で解決することができる。

国家神道の教育は明治以降のものであるが、明治憲法の制定や歴史教育を経て

広く国民に浸透していったこの国家イデオロギーを否定しない限り、

日本ファシズムと正面から対抗できないのである。

日本ファシズムの頂点は天皇に設定されていた。
事実上は軍部が主導権を握っていたとはいえ、表向きには天皇がその上に君臨している。
ここに民衆が超えることのできない道徳という壁があった。

当時の民衆意識、これは明治以降の長い天皇崇拝教育によるものだが、
そこに天皇否定という考え方は存在しないのである。

天皇の名のもとで進められる国家総動員法や治安維持法に国民は抵抗できない。

教育によってカリスマ性を植え付けられた天皇という存在には抵抗できないのが国民だったのだ。

それを計算した軍部のやり方が、大衆支配という点では一応の成功を収めているのだ。

当時の支配者層が天皇という存在をいかに重要視したのかは、

戦後の天皇の戦争責任の所在について連合国に問われた時の彼らの対応に垣間見ることができる。

ポツダム宣言を受諾する際にも、政府は
「天皇の国家統治の大権を変更することないのが条件」として最初から交渉に挑んでいる。
最終的には「あこがれの中心としての天皇の地位が不変という解釈における

『国体』は護持されたという結論に落ち着くのだから、
その方向性を結局最後まで押し通したことになるのだ。

天皇が戦犯として裁かれることを防ぐために、当時の内閣を中心とした支配層は

敗戦の責任は努力が足りなかった国民にあるような言い方をした。
戦争責任も軍部に押し付け、悪いのは軍人であって天皇ではないと主張した。

連合国側記者の質問にも、東久邇首相らは天皇には戦争責任がないように受け答えしているのである。

最終的にアメリカは天皇に戦争責任を負わせることをしなかった。

これは日本国民にある天皇に対する特殊な感情を逆なでしてはならない、

という判断が勝ってきたからである。

この第三者的立場にあったアメリカが、日本国民が天皇に持つ特殊な感情を

重要視したことは、日本ファシズムの特異性を考える上で重要である。

現代社会で暮らす我々が具体的に想像できない、

当時の民衆が持つ天皇への強烈な崇拝心というものが、

このことによって客観的に証明されているからだ。

日本国民内からも天皇の責任追及の決定的な声があがらず、現代まで不十分な結末で終わっている。

ドイツにおける全国民規模でのナチス戦犯の追及や、

イタリア国民によるファシスト戦犯追及とは大きな違いがあり、

これもまた日本国民における天皇という存在の特殊性を示すものであろう。

確かに戦時中は事実上、軍部が政権を握っており、天皇は、旧憲法によれば
統治、総帥、開戦講和など多くの大権保有者とされていた。

だが事実上は、その権力を行使しない存在であった、ということに留まっている。

他の諸国と違い、日本には明治維新以来政府が粘り強く培ってきた

支配者イデオロギーとしての天皇崇拝という特殊土壌が国民の中に浸透していた。

戦時中に軍部がその天皇制を全否定することなく、天皇という存在を上手く利用して、

天皇を頂点とする日本独自のファシズム形態をとったことが、

結果として民衆の抵抗を抑え、民衆を従わせる一種不思議な強制力を与えたのである。

この特殊な形態をとったことで、日本ファシズムは一応の社会的安定性と

国民に対する合理的理由を得ることができ、一時代を築くことができたのである。







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