アメリカ大使館 東京 行き方

「旅子、今お客さんから電話が入っていて、東京のアメリカ大使館に行きたいんだけど、

どう行ったらいいか、って聞かれてるの。分かる?」

 

電話のヘルプをお願いされた。

ケンは外出していたけど、その内容ならわたしでも分かる。

電話に出て説明してあげようと思った。


「すいません、そちらのケンさんから地図や案内は貰っていたのですが、家に置き忘れてしまいまして・・・」

そんな簡単な電話。

地下鉄の溜池山王駅ってことは分かっている方みたいで、今はそこにいるって言っている。

 

「13番出口です。そうです、そうです、駅についてからかなり歩く一番奥の出口です。

そこをあがってください。え? 今、13番出口ですか。

あがったら上に高速が走っているのが見えますね?

そうです、右手の方向に歩いてください」

 

 

アメリカビザ写真8.jpg

 


携帯電話だからちょっと声が途切れ気味だけど、ちゃんと聞こえている。

「はい、最初の交差点まで来ましたか。

交差点を挟んで向こうにスターバックスが見えますよね?

見えますか、では、その交差点を右です。右にまっすぐ行きましょう」


「そうです、歩いていると右に結構新しいビルがありますよね。

赤坂インターシティっていう新しくてお洒落なビルですね。

道路の反対側にコンビニもありましたか?

はい、もうちょっと真っ直ぐ歩くと大使館が見えてきますよ」


「あっ、警察の方に声かけられたんですよね?

目の前にちょっと人が並んでるところ、ガードマンがいる門が見えましたか?

はい、そこです。

そこで面接予約の紙を見せて、ID代わりでパスポートを見せて入ってください。

面接はあまり心配しなくていいですから、流れに沿って受ければOKです。

お気をつけて。いいえ、どういたしまして」

それで電話を切って、わたしの電話誘導は終わった。


電話を取り付いだコが近寄ってきて、

「やるじゃーん、旅子、なんか目隠ししても歩けるみたい?!」って言われた。

そうよ、わたし、大阪アメリカ総領事館の行き方は分からないけど、

東京アメリカ大使館になら、もう何十回も行ってるんだから。

目隠ししても歩けるかもしれない。


でもホントに目隠しして歩いたら警備の警察の人に怪しまれるよね!

あははっ!

 



タモリ 弔辞

「私もあなたの数多くの作品の一つです」

 

昭和を代表するギャグ漫画家・赤塚不二夫の葬式でタモリはそう弔辞を結んだ。


タモリもまた、現代を代表するコメディアンのひとりじゃないか。

 

そんな人が何故、自分を誰かの作品のひとつに例えたのか。

 

聞いてみればそこには知らない物語があって、現代版今昔物語に書き加えたくなってきた。


赤塚不二夫とタモリには親交があって、タモリのコメディアンとしての才能を最初に認めたのも、

 

タモリが世に出るきっかけを作ったのも赤塚不二夫だという。

 

肉親以上だという二人の付き合いはタモリの弔辞の全文を読めば分かるからここには書かないよ。


赤塚不二夫の人生はギャグに溢れていた。

 

タモリの芸もまた、ギャグに溢れている。


弔辞にあるね、今もこの座のちょっと上であぐらをかいた赤塚不二夫が

 

「オマエも笑いのプロなら、葬式でギャグのひとつでもやってみろ!」

 

とばかりニヤニヤとタモリを眺めている気がする、と。


詩的に解釈してみよう、それはタモリのフリだよ。

 

ギャグの師匠に向かって仕掛けた、タモリ最高のギャグ。

 

赤塚不二夫の死という悲しみを、笑いに転化しようとした、タモリ一流のはなむけ。


ニュースにも取り上げられたし、ネット上の掲示板でもだいぶ書かれた。

 

弔辞を読み上げたタモリが手にしていた便箋は、白紙だった。


時々手元のその白紙に目を落し、あたかもそこに書かれたかのような文章を淡々と読み上げたタモリ。

 

あまりに自然な動作だったので最初は気が付かなかったが、確かにあれは白紙だった。

 

視線を紙にやるくせに、言葉は暗記したもの、それをタモリは途中で詰まることもなく、見事にやり遂げてみせた。


――やったね、タモリ!――すごいよ、タモさん!


葬式という場の空気を壊すことなく、

 

赤塚不二夫とタモリをつないだギャグというキーワードを外すこともなく、

 

タモリはその場で最高のギャグを見せてくれた。


白紙が噂になった後、真相を聞かれたタモリはとぼけて答えている。

 

前日の夜にさぁ、酒飲んじゃったから弔辞を書くのが面倒で白紙になっちゃった、って。


そうだよね、ギャグの続きは茶化しだよね、真相を言ったら面白くないもん。

 

そんな訳がないじゃないか。

 

大恩人の弔辞を読む場だよ、タモリは最高のギャグを用意していた。

 

それはさらっと流すようにしなくちゃ面白くないもの。

 

だからタモリ最高のギャグはそうして一見地味にその瞬間には笑いを呼ぶこともなく終わった。


葬式の後、心の内でタモリは密かに爆笑しただろうな!

 

うまくギャグでしめることができたな、って。

 

あの世で赤塚不二夫は大爆笑しただろうな!

 

さすがは俺の一番弟子、見事にギャグで俺の葬式をしめてくれたな、って。

 

高らかに笑い合う二人のギャグ王の姿がイメージできて僕までつられて笑ってしまうよ!


赤塚不二夫のように、死んだときに自分が本当に誰かに必要とされていたのだ、

 

と分かるような人生を過ごせたらいいな。

 

タモリのように、人生の約束をちゃんと最後までやり遂げる人でありたいな。


「私もあなたの数多くの作品の一つです」

 

数十年分の想いが凝縮された、タモリの名言だね。

 

白紙の弔辞。

 

赤塚不二夫をあの世へ笑顔で送る、タモリ最高のギャグ。

 



予祝

予祝しよう、来年には新しいお店がオープンするのだから。

お祝いは事柄が全容を見せた後でしかできないなんてルールはないよね。

めでたいことが起こるのが確実になった時、僕は予祝しておくクセを持っている。


予祝のチカラ、それは信じることで本当に叶う可能性を引き上げる効果。

僕の願いは9割の実現性を有したとしよう。

あとの1割を引き寄せるために、予祝のチカラを使う。

 

 

 

 

駅前に大型ショッピングモールのがオープンすることが決まりました。

この喜びをどう表現すればよいか分からなくて、溢れる感情はどうにも止めることができない。


新しいお店はあと少しで開店するんだ、来年にはそのお店で週末のショッピングをする僕がいる。

神頼みに似た予祝だけど、その効き目は大きい。

先に祝ってしまえば、もう事実は後からついてくるしかない。


予祝で現実化を呼び込め。自己暗示をしてしまうのだ。

予め祝ってしまう予祝のテクニックを、僕は信じている。

 



現状の最上

「与えられた状況の中での、最上を取ればいい」

ある紳士は穏やかな口調でそう言った。


無理を通そうとゴネるのではない。

自分のことだけを主張してワガママを言い、多くの他人に迷惑をかけるのではない。


時間の流れるまま、縁が及ぶがまま、その時自分に与えられた状況をありのままに受け止め、

 

その中でも許される範囲で最上のものを獲得しようと求める様には、美しさが漂っている。


あれはブラジルへの海外出張。

混んでいてキャンセル待ちからやっと取れてきたJALの予約。


でも座席番号が通路側も窓側も取れなくて、3人がけの真ん中の席という最悪のパターンしか指定できなかった。


申し訳なさそうにそれを告げてきた旅行会社の人に対して、

その紳士は感情を見せることなくあっさりと承諾してくれました。


「24時間以上の長距離フライトだが、他の航空会社の通路側よりもJALの真ん中席のほうがマシ。

与えられた状況の中での、最上を取ればいいから、これでいいよ」


あれはあなたのコロンビアへの海外赴任。

滅多に発生しない難しいビザだから、必要書類が一転二転して迷惑をかけてしまった。


最終的に当初の出発予定日から遅れることなくビザは取れたのだが、

案内の不備を詫びてきた旅行会社の人に対して、その紳士は言ってのけました。

「最終的に出発に間に合ったからいいよ、ありがとう」


あれは2001年のこと。

上村課長、あなたは確かに私にそう言ってくれました。


中庸の上とでも言うべきか。

こんな素敵な言葉を引き継いでゆきたくて、ここに残すよ。

 





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