アメリカ留学ビザ 目的

「今から考えるとわたし、よくアメリカ留学ビザ取れたな」

tokoは冗談まじりに笑った。


「だって、あの頃、19とか20の時にビザ面接なんてしたら

わたし、ヘンなこと言っちゃいそうだよ。

面接でビザ却下されてたかも!なんてね〜」


「大丈夫だよ、その年齢の申請者に詳しい目的なんか聞くもんか。

書類とお金があれば問題ないでしょ」

そうは言ったものの、tokoの言う心配事はもっともだと思った。


アメリカ留学ビザ、それはFの学生ビザであれ、

Mの専門学生ビザであれ、Jの交流訪問者ビザであれ、

一番大切な目的を答えられない人が多いのが実情だろう。

 

 

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「ケン、もちろんただ英語を学びたい、っていう理由だけじゃ弱いんでしょ?」


「弱いよ。日本の英会話スクールに通えばいい、って言われたらもう反論できない」

「そうだよね。なんか他の目的を立てなくちゃダメだよね。


でも実際あの頃なんて特に目的はなかったもん。

お金を出してくれる両親がいて、

新しい世界に飛び込みたかったからアメリカに留学しただけ。

そんな人が多いんじゃないかな」


「そうだね。まぁ9.11以前はそれでよかったけど、

もう留学=自動的にアメリカ、と考える時代じゃないからね。

他の安心な留学先もいくらでもある。


だから、きちんとアメリカに何を学ぶために行くのか、

そしてそれを日本に帰国した後でどう活かすのか、

それを説明しないといけなくなると思うよ、これからの留学ビザ申請者は」


わたしはそう言って言葉を閉じた。


昔は良い時代だったんだ、まだなぁなぁの世界で互いがある程度信用できた。

でも今はもう・・・。

 

パスポート番号 海外発行

信じられないものを目にした。

TEから始まる番号のパスポートなのに、なんと海外発行。

TZじゃないのに、海外発行のパスポートもあったんだ。

そのパスポートに目をやると発行地にLONDONとある。

この前、tokoにTZ/MZのパスポート発行地のことを話したばかりなのに、

そのルールから飛び出しているものがあるなんて。

ロンドン発行のTEを見つけてからわたしは色々調べて見た。

するとどうやら例外はロンドンのTEだけだということが分かってきた。

他のエージェントの知りたいに聞くと知っている人もいれば、まったく知らない人もいる。

現在存在するその例外のパスポートなんてすごく希らしい。

 

 

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まとめよう。

今は違うよ、でも2000年前後にロンドンの日本大使館で発行されたパスポートが

TEから始まる番号のものがあって、しかももうTEパスポートは失効しているものなのに、

2010年ぐらいまで有効なパスポートがある。

大半は機械読み取り式パスポートだからアメリカ入国も問題ないけど、

逐一見てゆかないと読み取り式かどうかは分からない。

TEで始まって有効なパスポートはロンドン発行なんだろうってことも

疑ってかからないといけないようなのだ。

――さぁ、このことをどうやってtokoに説明しよう。

別に悪びれることもないけど、先輩の見栄っていうか、やっぱり今知った、とは言えないもんね。

昔から知っていたような話にどうやってもってゆこうかな。

 

アメリカ生まれ 二重国籍

「ある時、とても不思議な事件が持ち上がったんだ」

推理小説の探偵さんみたいな口調でケンは語った。

あれは横浜の港が見える丘の、とある領事館に行った帰り道、バス待ちの時間のこと。

「まだバスが来るまで10分はある。

ここに来たらやっぱり港が見える丘からの景色を見ないとね」

と言ってケンはバス停からバラ園を歩き、港が見えるという公園までわたしを連れ出した。


「えっ、あなたアメリカ人だったんですか?って事件だったんだよ。

僕も驚いたが、相手はもっと驚いていた。

まさか自分がアメリカ人だってこと知らなかったんだから」

「?????」

「普通のL1ブランケットを申請したらね、出生地がアメリカなのは気になっていたんだけど、

もう30歳だったから国籍の選択も済んでいると思ったんだ。

ある日、そのお客さんから電話があってね、お客さんも不思議そうな声で、

今アメリカ大使館から電話があって、あなたはアメリカ国籍を持っているから

ビザは発給できないのでアメリカのパスポートを取ってください、と言われた、

と彼は言ったんだ」


「二重国籍、ってヤツかな。よく知らないけど」

「tokoも知らないだろう?いや、これは誰も知らなかったよ。

二重国籍って大人になったら国籍を選択するものだと思っていた。

実際、日本はそうなんだよ。二十二歳で選択だ。でもね、アメリカは違う。

アメリカは二重国籍を認めているんだ。

そして、日本も大人になっても国籍選択をしなかった者に対して

日本国籍をすぐに剥奪、ということはしていない。

場合によっては日本国籍を失う、とは言っているが強行することは余程ないだろう」


「へぇ〜。そんなことがあるんだ〜。それで?ビザはどうしたの?」

「これが会社ともめたよ。アメリカ国籍を放棄してアメリカビザを取得するか、

もしくはアメリカのパスポートを取得してアメリカ人として赴任するか。

結局はね、アメリカのパスポートを取った」


「それって問題とかゼッタイあるでしょ???」

「そう。つまりはアメリカ人だからね、急にアメリカが徴兵制になったら

アメリカ人として徴兵されるだろうし、

アメリカ市民として裁判の陪審員に招かれるかもしれない

会社の人事が動いたけど、結局は日本国籍の放棄まで強制させることはできなかった」

「なるほどね。本人はさぞびっくりしたでしょうね。

まさか自分がアメリカ人だっただなんて、30歳にしてやっと分かった、ってことでしょ?」

「それもそうなんだけどね、もっとびっくりしたのがそのアメリカ人の奥さんさ。

自分のダンナが本当はアメリカ人だった?!

なんか不謹慎だけど、びっくりを通り越して笑えちゃうかも」


「本当ね!ね、その場合、奥さんのビザはどうなるの?」

「アメリカ人を配偶者に持つ外国人が取る移民ビザだよ!

手続きはややこしいけど、永住権が取れるんだ。これもびっくりしていたよ」

「うわっ。驚いたなんてもんじゃないでしょうね〜。」


そう話している間にわたしの視界に横浜港の景色が飛び込んできた。

ベイブリッジも見えるし、港みらいのほうまでこの丘からは一望できる。

「あれは事件だったね。人生では知らないこと、意外なことが突如降ってくることがある。

運命の悪戯、人生のびっくり箱。

まさかアメリカビザ申請をしていてそんなことに出くわすとは、

誰もが想像できないことだった。面白いよ!」

港風に髪をなびかせて、ケンが無邪気に笑う。

ケンと一緒にそんなビザの世界を冒険するのも、

なかなか楽しいんじゃないかな、とわたしは心から思っていた。

 

アメリカビザ 有効期間

――ねぇ、ケン。アメリカビザの有効期間ってどうして3年なの?

――それはね、人間の生活が3年を周期に変わってゆくからだよ。

仕事の話だと思って真面目に聞いたのに、ケンはそういう答え方でわたしを煙に巻いた。


――ちょっと!そういうことじゃないでしょ?

――いやいや、これは真面目な話。

Lビザが3年間有効なのはそういう意味じゃないかな。

何しろLは海外転勤のビザだからね、生活のタームっていうか、

人の変化の区切りを無視したつまらないビザルールを

アメリカは採用していないってことさ。素晴らしい!


――そんないきなり言われても分からないわよ。

でもEとかFは5年でしょ?Jは1年か2年で許可出ることが多いじゃない。

不思議ね、それぞれ違うなんて。

――あぁ、そうだね、toko。まぁ、不思議なようで不思議ではないんだ、

このアメリカビザの有効期限の話って。Lは企業内転勤で、一時的な海外赴任だよ。

それには仕事以上に生活のリズムというものが意味を持つ。

人は3年単位で変わってゆくから、その区切りのひとつを

アメリカで過ごすというのはとても納得できる話だ。

3年で帰れるならば心も整理しやすい。

 

 

――うん。そう言われれば分かったような気になってきた。じゃ、5年のビザは?

――あれはまたビザの種類が違うよ。

E1/E2はアメリカへお金を投資している人たちのビザじゃないか。

生活の本拠、とまで言わないが資本を投資しているなら3年じゃ短過ぎる。

せめて最低5年、それにEビザは投資が継続されている限り無期限で延長されるからね。

お金を稼ぐのだから5年からが正解さ。

Fの留学ビザだって、大学は4年なんだし、

何かをしっかり身につけようとしたら3年じゃぁちょっと足りない。

ほら、やっぱり5年がぴったりだよ、Fビザも。


――ふぅん。上手く言ったわね。ますますその気になってきたかも。

――だろう?だから研修の意味がある交換留学のJビザの

2年か1年っていう有効期限も、あまり研修が長過ぎてもだらだらしちゃうことを

考えれば妥当だし、B1/B2に見る5年か10年っていう有効期限も、

基本的に人の生活や会社が変わらないっていう世の中の道理を考えれば、

申請者と大使館にとってはお互いに最低限の作業工数で、

かつ、最長の有効期限だと思うよ。良くできている。実に良くできている。


――なんかやけに大使館の肩持つのね!領事さんみたい!

――ははは。ホントだね、tokoの言う通り。我ながらヘンだ。

ビザルールって移民法で決められたものだけどさ、

勝手に解釈したらこんなになっちゃったよ。

アメリカって非合理的の部分が結構ある反面、

こういうところは実に合理的で、結構物分りがいい。凄いって思うよ。

 

――ねぇ、他の国のビザはどうなの?やっぱり同じくらい?

――いやいや、それがまったく違う。

イギリスのエントリークリアランスが5年有効なのは特例だけど、

他の就労ビザは通常1年か2年更新だ。

――なんでそんなに違うの?

じゃぁ、ケンの言う生活周期とビザってホントは全然関係ないんじゃな〜い?


――おいおい、それはないよ。ビザの有効期間と人間の生活って、

互いに切っても切れない関係で、表裏一体のものだと思うよ。

中国のZビザのような1年更新のもののほうが不自然っていうか、

人間の道理を分かってないっていうか、無用な手間を互いに痛み分けしているな。

だってさ、働く環境が1年で変わると思う?

転職じゃないよ、同じ企業に勤めていながら1年で何かが急激に変化するとは思えない。

更新の意味が分からないよ。

 

――ちょっと!わたしにも言わせてよ。

そこはケンみたいにわたしにも偉そうに語れる!

1年とか2年っていう割合短期間しかおりない労働ビザはアジアに多いと思うけど、

あれはあれで更新を受け付ける側の仕事として成り立つから、

雇用供給のためにはいいんじゃないかな?

1年に1回と、3年に1回じゃ、労働局のスタッフも3倍違うってことでしょう?

どう?わたしのこの意見は?


――素晴らしいね。tokoのおっしゃる通りで正解だと思うよ。

就労ビザって一口に言っても、それぞれの国で違う事情がある。

その中で一番合理的な制度を取っているのはアメリカだと思うけど、

他もそれぞれで理由があるんだろうね。

ビザの有効期限の意味の深さっていうのも、

なんていうか不思議っていうか、奥深いものだな。

――本当ね。ほら、わたしたちのこのビジネス上の関係も3年持つとは限らないし。

恋人や夫婦の関係も3年か5年更新だったら面白いのにね!あはははは!


――その考え方って怖いなぁ〜。でも真実かもしれないね。

ビザの有効期限の数字から読み取れることって結構あるみたいだ。

考えれば考えるほど、面白いものだと思うよ。

――ホント。なんかこんな会話をしている間に、ビザの有効期間の数字の裏に隠された、

人間の生活の様を旅しちゃったみたい。結構面白い話だったかも。


――あぁ。決められたはずの移民法も、詩的な解釈をすればこうなる。

こういう考え方も面白いと思うよ。

ほら、なんだか身近に感じてきただろう、アメリカビザの有効期間って。

 





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