【総論】ローカル化<グローバル化、未来の車に大差はつかない

「未来の車を考えてくる、過去をさかのぼることで、現代と未来の車を知るのさ」

そう言って行き先も期間も告げずにフラリと出かけて行ったトラさん。

まるで昔の人情喜劇みたいだけど、ここは未来の自動車を連想していくマジメな場

 

最近はSNSが便利だから、トラさんが頻繁にアップするインスタグラムを見ればどこにいるか分かる。

隠したいのか目立ちたいのか分からないよ、追尾は簡単。

 

今回はアメリカ・ミシガン州のデトロイトへの旅みたい。

ヘンリーフォード博物館、物量圧倒時代の華」というキャプションに、

ありし日のビッグ3を懐古しては解説するトラさんを思い返していた。

 

 

ローカル<グローバル、未来の車1.jpg

 

 

よくこう言っていたわね。

「あの当時、アメリカさんの車作りの強さの根は、圧倒的物量・労働力だったわけさ。

その土俵に戦後のヨーロッパ車・日本車が台頭できたのは、物量がないが故に知恵を使ったことにある。

ヨーロッパではセンスを用いて車を美しく強くし、日本では知恵を絞って製造コストの低減や品質向上を磨いた。

そこに優位性を見出すしかなかった」


私もところどころで質問を入れて、トラさんの本意を伺ってみる。

「さすがは未来の車の探求者ね。それで、その物量の違いって、どのぐらいだったの?」

 

「うん十倍。色々なモノサシがあるのでひとつに数値化すると角が立つけど、

確実なのは数倍どころじゃなくて、うん十倍だってこと

戦国時代の白兵戦では、兵力差が1.5倍もあったら勝敗は明白だったんだよ。

プロ同士なら2人が3人に勝てるわけない。無勢で多勢に打ち勝つ幻想を見過ぎだったのが昔の日本人」

 

「それは当時の自動車勝負でもそうだったの?日本人も勝とうとしたの?」

「いいや、第2次世界大戦で負けた直後だから、さすがに知恵だけで物量差に勝てるとは思っていなかったはず。

そこから地味に知恵を築き上げていって、歳月をかけて日本ビッグ3の自動車メーカーの今がある」

 

「じゃぁ、現代ではその物量差にかわるものは何なの?何がトップを走らせているの?」

「良い質問だな、未来。それはね、グローバル化によって無力化された物量差ってことなんだよ」

トラさんはそう言って、机上のお茶のみに手を出した。台湾産の高山茶がお好みの彼。


「えっ?また物量差?何それ、違いがないじゃない」

「違いがあるんだな。戦前のアメリカは、物量のみならず文化や経済でも世界のトップを独走していた。

2位以下とは格段の差があった。それが現代では、グローバル化によって世界各地間の情報量の差がなくなり、

互いの文化が浸透し合い、極めつけはインターネットの普及によってどこにいても情報共有されるようになった。

アメリカが利便を認めて張り巡らせたインターネットが、皮肉にもアメリカ自身の独走を阻止した。

世界の標準が底上げされたんだ、だからもう独走時代ではなく、どの国もアメリカに追いついた」

 

 

ローカル<グローバル、未来の車2.jpg

 


なるほどね、そう言われれば分からないわけでもない、トラさんの発想は。

「それでも各国独自の文化って残るでしょう?それが未来の車の強さを左右することにはならないの?」

私も知りたかったから踏み込んで聞いてみた。

 

「あー、いいね、未来。大なり中なり各国のローカル化は個性を残すけど、

未来の車の出来を左右するほどの大きな差になり得ない。

それほどに、現代の自動車メーカー間ではベンチマークが徹底している。

これらは総論だけどね、総論。一歩踏み込めばこんな部分ではそんなことはない、っていう各論があるのも承知」


決まってトラさんは総論と各論を明確にした。

両者をごちゃまぜにして、ぼやっとした結論に導くのを善しとしない人だった。

今回のデトロイト訪問ではどんなアイディアを得て帰ってくるのかな。

そして、それが未来の車談義にどう活かされるか、興味を引かれていた。

 

純粋に、未来の車に興味がある。単純に、自動車の設計に未来を見ていたいんだ、彼は。

こうしてブログに「未来の車 トラじろう」を書き残すのも、彼の特有な空想に一条の光があると信じているから。

この雑文を読んでくださるあなたに、ミクロレベルでもいいから、ナナメ横の角度からのヒントを与えてあげたいから


「グローバル化が進み、物量差がつきにくくなると、違う価値観・能力が未来の車を先駆するようになる。

僕の感性で言わせてもらうと、.茵璽蹈奪兩におけるセンス ▲▲献∪における勤勉さ だ。

我がままな決め付けだけど、意見ははっきりと述べないとね」

「おおまかなイメージは分かるよ。総論では誰も否定できないじゃない」

 

 

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「ありがとう、未来。もう1つ、不明なのは中国・インドという国のこと。

あそこは、アメリカ級の物量差とアジアの勤勉さを両翼として、まさかのビッグバンを起こすかもしれない。

素敵な意味で不気味な存在・・・」

 

「人件費の安さもあるし?」

「今はそうだね。まぁ、グローバル化の進捗次第でいつかは中国・インドだって人件費の底上げがされるだろうから、

あまりそれは考慮に入れていない。いずれにしても両国の進化はこれまでの先進国への脅威だよ。

台風の目、番狂わせ。まぁ、いくら中国・インドだろうと、世界中の富はもう独占できないグローバル化真っ只中だけど」

 

トラさんの言った「世界の富はもう独占できない」が心に残った。

中世のヨーロッパ、近代のアメリカ、オイルマネーで潤った中東だってシェールガス・脱原油という難敵が出たし、

人件費で世界の工場と呼ばれた中国も、永続できないのは目に見えている。


そんなことを妄想していたら、トラさんの帰国してくる日が近くなった。

フーテンを気取る彼でも、今では航空会社の予約番号さえあればフライトスケジュールを覗くなんて朝飯前。

未来の車と同じね、未来の車トラじろうは、もう不透明な旅人じゃいられないってこと。


デトロイトから帰ってきたトラさんは「どうだ突然帰ってきて驚いただろう?」という表情を見せたけど、

「良かった、デルタ275便はオンタイムで到着したでしょ、雷雨の影響でディレイしないか心配したわ」

という私の先制攻撃に撃沈していた。

 

それでも殊勲な心がけで「過去から現代の動きが整理された、今が未来の車の再スタートだ!」と力強く総括した彼。

お土産のメープルシロップ(カナダの国境も越えたの?!)を渡してくれながら、あれこれと語ってくれた。

 

細部は全然分からなかったけど、推測すると、こんな感じだろうか。

 

・ローカル化 < グローバル化 なので、太古のように大差はつかない

・規模がモノを言いそうだが、昔のようにそれが決定打にはならない
・次にどんな新種類の未来の車アイディアを打ち出し、実現化するかが勝負

 


自動車誕生から250年が経とうとする今、第2のスタートラインが各社の目前に引かれ直されたってことね。

ファッションショーのように濃いセンスで群衆をひっぱるのではなく、実現できそうな3年先の車を出し合って、

様子を見ながら進めていく未来の車、そこに大きな楽しみはなく、英雄もヒロインもいない。地味な競争あるのみだ。


自動運転技術やオンラインでつながる車が話題になる都市部がある一方、

陸地面積の大半を占めるのは車を日常の足として多用することに変わりがない田舎。

それらの多数を、経済規模の大半を握って主導する未来の車はどう誕生していくの?

 

着実な踏み込みで加速していく未来の車を見たい、だからここに空想物語を連ねていくわ。

 

未来のコンセプトカー

僕が推す未来のコンセプトカーは、視野270℃を確保する車。

 

既存車の常識を覆せ、技術的・コスト的には無理があろうとも

コンセプトカーの武器である発想力の転換を使ってイメージを打ち立てよ。

 

運転していて、いつも気になる斜めの死角、車のフロントピラー。

これを排除するのが未来のコンセプトカーではないよ。

 

衝突時の安全性・耐久性を考えればむしろピラーは太く厚くした方が良い。

透明な素材で頑強なものがあればそれを未来のコンセプトカーで

フロントピラー(Aピラー)、それからセンターピラー(Bピラー)にも使いたい。

 

 

 


若干の感情を持つ車にしましょう。

 

次に考える未来のコンセプトカーは、他の人では発想できないもの。

マナーの悪い運転をしたら、車がちょっと不機嫌になって運転手は居づらさを感じる。

すると人間心理として、その不調和を避けようと自然と丁寧な運転をしようとする。

 

具体的には、スピードを出し過ぎると「えっ?えーっ?」と心配そうな声を出す車。

 

前の車との車間距離が短いとドキドキして落ち着かない車。

無理な割り込みをしようとすると「チッ」と舌打ちする車。

長時間運転していると車の方があくびをしだして休憩を求める。

 

今までの車に感情がなく、運転手の忠実な機能になり下がっているのに不満があった。

僕の未来のコンセプトカーではパートナーとして感情に訴えてくる。

面白いよね、空想の世界で未来のコンセプトカーを創る自由な時。

冗談みたいで真面目な未来のコンセプトカーの話。

 

 

 

 

実用最重視の方針を取る僕が、未来のコンセプトカーに求めるのはシンプル。

 

停車時に横歩きする車。

 

「走る、曲がる、止まる」が車の基本とされてきて永らく経つが、

そこに風穴をあけることができたらどんなに新しいことか。

 

駐車場から車は前後にしか動けないことを不思議に思ったことはない?

縦列駐車をする際、ピタリと横付けした車がカニ歩きをして横にずれればそれで事足りる。

 

未来の車は停車時に横歩きできないか。

コンセプトカーをうたうには地味な機能過ぎてウケない?

今の技術でも可能は可能なのだが、コストがかかり過ぎる?

そういうプロらしい反応はごもっとも。

ハイブリッドだって人工知能だって不可能を可能にして生まれた未来のコンセプトカー。

 

「走る、曲がる、止まる、四方に歩く」

これを未来のコンセプトカーとして僕はうったえよう。

 

ハイブリッド 未来の車

「ハイブリッド技術の先に見ているのは燃料電池自動車をトヨタが独占すること。

トヨタの狙いは 明白じゃないですか」

オートモービル・アナリストの未来氏はそう当たり前のように言い切った。


「あなたなら電気自動車と燃料電池自動車のどっちを選択する?と聞かれましたね?

わたしは燃料電池自動車だと思います。

確かに電気自動車はもう既に技術的には実用間際まで来ていて

今すぐ国が政策として電気自動車にシフトすれば数年先の排気ガスは確実に削減できます。

石油から天然ガスへと依存するエネルギーが変わっていって

次の将来に、そしてそれがきっと永続すると思いますけど

究極的に人類がたどり着くべきは水だけを排出するクリアなエネルギー、水素エネルギー技術なのだから」


女性には珍しいオートモービル・アナリスト、持ち前の明るさで各方面に人脈を持つ才女だと聞く。


「インテルとマイクロソフトがパソコンの世界を独占したでしょう?

トヨタは あれと同じことをやりたいはずよ。

それは石橋を叩いても渡らないトヨタだから、まだ時期尚早と思って本腰を感じさせないけど、

ハイブリッド技術のことでわたしはトヨタの真意を感じ取っていますから」

 

「未来さんから見てハイブリッド車を制するのは 世界のどのメーカーだと思われますか?」

――車雑誌の記者なら 当然知っているはずなのに

 

 

 

 

「トヨタ自動車です、これが間違いならその時はわたしがこの仕事を辞める時ね。

すでに90%のシェアがあるし、ハイブリッド技術をあの日産に提供したことが決定的なキーね。

日産に手の内を明かしても業界の先駆者になり続けられるものを持っているからできることよ。

 

巨額の研究開発費をいくらかでも肩代わりしてもらえることも狙いだろうし、

それに業界全体のレベルアップが インフラ整備にもつながるし、

トヨタにとっては二つの意味でWIN−WINの図式。

 

他社と協力することで得られる 目先のWINと

他社へ協力した後でまた必ず自分に戻ってくる 長い目でのWIN

このふたつを手中にするのが確実とわたしは思っていますから」


「そのことがいつか燃料電池自動車の実現につながってゆくと思われますか?」

 

「ハイブリッドは燃料電池自動車にも応用できる技術。

ハイブリッド・ナンバーワンになった時、トヨタは燃料電池自動車ナンバーワンをモノにしてしまうでしょう。

燃料電池技術を牛耳れば、

かつてパソコンの世界でインテルのCPUがパソコンの頭脳としての機能を独占し、

マイクロソフトのWINDOWSがOSパソコンの血液としての機能を独占したように、

トヨタは車業界全体の主導権を握る。

 

燃料電池技術は住宅にも応用できるから不振続きのトヨタホームも悲願のシェアアップを望める。

トヨタ自動車の狙いは限りなく広く、

それも実用可能な夢ばかりなのだから羨ましくなっちゃうわね!」


「すると他の自動車メーカーには勝ち目はないと?」

そう食い下がる記者に向かって未来は身を乗り出して言う。

 

「さすがはお堅いトヨタさん、盤石の攻めだからもうあとは時間の問題、チェック・メイトよ 未来の車さん!」

 

レポート 未来の自動車

「未来の自動車」が授業のテーマになったので、インターネットでグルグルと未来の自動車のイメージを探している。

ちょっと難しい課題じゃない?

大体さ、自動車のことなんてあまり知らないのに、未来の自動車なんてどう書けばいいのか。


とりあえずハイブリッドカーが未来の自動車の最有力候補って書いておけば無難?

もしくは、ゼロエミッションの電気自動車こそが未来の自動車の到達形だって書いちゃえば合格?

 

よーく考えてみよう。

別に先生たちは君たちに自動車の技術的な問題解決を問いかけているわけではないよね。

むしろ、学生にしかできないようなアイディア、想像の飛躍を求めているんじゃないかな?

 

 

 


そうだ、未来の自動車の宿題回答は、思い切って君にしか思いつかない未来の自動車をぶつけてやろう!

ある男の子は「未来の自動車は、柔らかい素材なので事故っても人間を傷つけない」って書いたよ。

ある女の子は「未来の自動車は、毎日の気分でカラーもデザインも自由に変えられるの」って書いたよ。

 

そういうのは面白いアイディアだよね、

自動車会社のプロ・エンジニア/クリエイターたちからは決して出てこないもの。


ネットを彷徨って未来の自動車は見つかるかなぁ。

探している未来の自動車は、君の頭の中のガレージに停まっているのかもしれないね。


で、君はどうする?

まさか、「未来の自動車はブレーキとアクセルの踏み間違えがない構造」みたいな、

中途半端に自動車の機能をいじったレポートは書かないよね?

 

未来の車は空を飛んでいるから、タイヤを必要としていない。

空っていっても、そんなに高く飛んでいなくて、

リニアモーターカーのように、磁力を使って道路から数十センチだけ、浮いている。

運転する人には違和感なく、普通にタイヤありの車を操縦しているのと同じ。

牛車や人力車、水車以来使っていた車輪・タイヤ、そういう概念が外されているのが未来の車?

 

あなたらしく自由な発想で、未来の自動車をレポートしてみてよ。

 

昔の車

昔の車愛好家たちのファンクラブに入って久しいが、年々驚くことがある。

そもそも昔の車、という言葉の境界線がはっきりしていないのだが、

それでもクラウンやフェアレディZぐらいまでが昔の車だという暗黙知。

 

しかし、しかしだな、君!

この前に、若者が乗ってきたのは、トヨタ・プリウスの初代、97年末に発売された車。

 

わたしのような老人にとって、プリウス初代車なんて最近の車、現役の車、あるいは未来の車

まさかそれを昔の車と認識して、昔の車パーティーに乗りつけてくるなんて驚きでしかなかった。

 

ホンダ・フィットの初代や、レクサスに統合されたハリアーさえ、今や昔の車扱いなの?!

 

 

 

 

なんて大袈裟に驚いてみたが、子供の成長を考えれば、十年ひと昔。

だから十年前の車が昔の車というカテゴライズをされても、不思議のひとつもないのでした。


流れる時に沿って、昔の車も段々に若返りをしていくのも、矛盾ではない。

昔の車は、そろそろ「大昔の車」「中昔の車」「小昔の車」のジャンル分けされてもいい。


時の流れは水の流れの如く、いつでも留まるところをみせず、先へ、また先へと。

 





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