アメリカビザ 犯罪歴

「今までのアメリカビザ申請で一番困ったこと?う〜ん、困ったことねぇ。。。」

 

わたしがそう聞くとケンは腕組みをして考え込み始めた。

 

「えっ?あんまり困ったことがないのかな?さっすがに仕事のできる男は違いますねぇ・・・」

 

「いやいや、逆だよ!どれにしようか迷っちゃうぐらい、困ったことは沢山ある」


ちょっとからかってみるとすごい勢いで反論してきた。

 

そっちか。でもこれは是非とも聞いておきたいな。


「そうだね、一番困るのは、ちゃんと事実を教えてくれない申請者かな。しかも意図的にね」

 

「どんなケースがあったの?教えて」

 

「過去、一番話がこじれたケース。結局ビザは発給されたんだけどね。

 

随分前、これはまだ面接もいらなかった頃の案件だよ。


アメリカの駐在員が日本に出張に帰ってくる間にビザを更新してくれ、と依頼が入ってきた。


普通のことだからね、書類を提出して発給を待ったら、当時通常2−3週間であがってくるのに、全くあがってこなかった。

 

その人より後に申請した人が先に発給されてきたりして、焦ったんだ」

 

「うん、うん」

 

「困ったのはその駐在員も忙しい方だったから、当然早くアメリカには帰りたいし、


日本にいても仕事ができない。散々PUSHされて困ってしまったのは僕だった」

 

「やだね!典型的な板ばさみってヤツじゃない。

 

当然大使館に聞いてもいつ結果が出るなんて教えてくれるわけもないし、どうにもできないんでしょ?」


「そう。どうにもできない。

 

日本的なサービスでいうと何かしなくちゃ顧客は納得してくれないんだけど、本当にどうしようもなかった。

 

申請から1ヶ月が過ぎた日、受領に入ったらファイルが帰ってきたんだ。

 

本人出頭を要求するレターと一緒に」

 

「えっ?どうして?まだ本人面接のない時代だったんでしょう?」

 

「そう。おかしいと思ったよ。

 

レターには、指紋採取をする必要があるので本人が来てくれ、と書いてあった。

 

不審に思いながら本人に説明したよ。そうしたら、なんて言われたと思う?」

 

「えっと、すっごい話なんだから、

 

実は、わたし双子の兄弟で身代わりです、とか(笑)?」

 

「それはないでしょ〜。それはやばいでしょ〜。

 

その人はね、実は隠していたけどわたし犯罪歴っていうか、

 

飲酒運転で捕まった前科があるんです、とその時になってやっと話し出したんだ」

 

「飲酒運転?そういう種類の犯罪はビザ申請に影響あるの?」

 

「答えはYesだよ。何が問題かって、飲酒運転自体じゃない。

 

申請書DS156の質問事項で事実を隠して回答してしまったこと、

 

何らかの違法行為によって逮捕されたり有罪判決を受けたりしたことがありますか?

 

という質問に、故意的にNoと回答してしまった、その行動そのものがまずかったんだよ」

 

「なるほど。事実以前の問題で、悪意によって事実を隠して申請しようとしたって判断されたわけね」


「そうなんだ。それから本人は大使館に出頭して両手全部の指の指紋採取を受けた。

 

なんとその1ヶ月後になるよ、ビザが発給されたのは」

 

「さらに1ヶ月?申請してから2ヶ月かぁ〜。それは業務に支障が出るでしょうし、

 

そんな自己都合で会社に迷惑かけたら何がお咎めあるかもしれないね〜」

 

「そうだね。どうも指紋をとられてからの1ヶ月の間に、

 

アメリカ大使館は本国のFBIにその指紋データを問い合わせしていたらしい。

 

つまり、ビザを発給しても問題ないような割合軽い犯罪だったのか、それとも重い案件だったのか、って」

 

「なんだかすごい話になってきたわね」

 

「だろう?それで結局はビザ発給になったけど、

 

ビザシールの追記欄、Annotationのところにビザ却下には該当しない経歴、と追記されていた。

 

だから、これは結果論だけどね、最初から質問事項にYesと回答して、

 

自ら証拠書類を全て提出していれば通常の2週間でビザはおりたかもしれない。

 

今となっては分からないことだけど、そういう考え方もあるんだ。

 

何もかもがダメじゃない。逆に、スピード違反1回でその欄をYesにされても困る。

 

もっと思い問題の場合、ってことさ」

 

「なるほどね〜。なんかすっごくためになるお話が聞けた感じ。

 

やってしまったものは仕方ないから、素直に話して判断を委ねた方がいいってことね」

 

「そのことがあってから、DS156を作るときの質問書はよくお客に説明して書いてもらっているよ。

 

軽犯罪でもいいから、何か気になったことがあれば相談してくれ、と。

 

黙って虚偽の申請をすることのほうが深刻な問題だ、と書いてからはその種のトラブルがなくなった。


本当に色々あるものだよ、アメリカビザ関係は」

 

ケンがため息をつく。

 

また仕事に戻りながらわたしも考えちゃったけど、このビザっていう仕事は日常生活に足を下ろしていないようで、

 

実は結構人間の最低限のモラルが問われることもあるんだな、と思い返していた。

 

 



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