大きなミス 小さなミス

「落ち着いてやれば絶対できるから」

店長にそう優しく言われた時は逆にショックだった。


注文が殺到し過ぎて、仕事が全然回らなくなった居酒屋の厨房の焼き場。

慌てたバイトが焦がしてしまったつくねをお客様に出そうとして、

社員のチェックが入り、もう一度やり直しになった時、店長は少しも怒らずにそう言ってバイトを励ました。


酒飲みで、短気で、豪快な性格の店長。

忙し過ぎて誰もがカリカリしている時なのに、

バイトの若僧の無謀なミスにも動じることなく、そう言って逆にバイトを励ます方法を取った。


店長の性格を考えれば、怒って一喝のほうがよっぽど似合っているのに。

大体いつも細かいことで、ガミガミ叱ってばっかりだったじゃないか。


ただ怒られるよりもずっと強烈に意識に残った、その店長のメッセージ。

部下への愛情のある叱咤激励。

その一言だけでバイトの若僧は店長を尊敬し、

その後は店長のためならばどんな苦労も惜しまない忠実な部下となった。

 

 

 


小さなミスはいくら責めてもいい。

細かく言って、うるさく繰り返して、改善を促すべきだ。


ただし、大きなミスの時こそ、あえて不問に帰すべきではないか。

大きなミスをわざとやろうとする人はいない。

何らかの原因が重なって大きなミスが出てしまったその時は、

ミスした人を叱りつけることじゃなく、先輩や上司がフォローしてあげるだけでいい。


いつかそのバイトの若僧が大人になった時、店長のことを思い出して

自分の部下の大きなミスを救ってあげる日が来ると思うよ。


店長の剛直なイメージと、優しい一言のギャップに

若僧がやられただけかもしれないが、その逆説の一言で、一生の敬意が生まれた。

 



コメント
コメントする


© 2006 - Ken Box