ハイブリッド 未来の車

「ハイブリッド技術の先に見ているのは燃料電池自動車をトヨタが独占すること。

トヨタの狙いは 明白じゃないですか」

オートモービル・アナリストの未来氏はそう当たり前のように言い切った。


「あなたなら電気自動車と燃料電池自動車のどっちを選択する?と聞かれましたね?

わたしは燃料電池自動車だと思います。

確かに電気自動車はもう既に技術的には実用間際まで来ていて

今すぐ国が政策として電気自動車にシフトすれば数年先の排気ガスは確実に削減できます。

石油から天然ガスへと依存するエネルギーが変わっていって

次の将来に、そしてそれがきっと永続すると思いますけど

究極的に人類がたどり着くべきは水だけを排出するクリアなエネルギー、水素エネルギー技術なのだから」


女性には珍しいオートモービル・アナリスト、持ち前の明るさで各方面に人脈を持つ才女だと聞く。


「インテルとマイクロソフトがパソコンの世界を独占したでしょう?

トヨタは あれと同じことをやりたいはずよ。

それは石橋を叩いても渡らないトヨタだから、まだ時期尚早と思って本腰を感じさせないけど、

ハイブリッド技術のことでわたしはトヨタの真意を感じ取っていますから」

 

「未来さんから見てハイブリッド車を制するのは 世界のどのメーカーだと思われますか?」

――車雑誌の記者なら 当然知っているはずなのに

 

 

 

 

「トヨタ自動車です、これが間違いならその時はわたしがこの仕事を辞める時ね。

すでに90%のシェアがあるし、ハイブリッド技術をあの日産に提供したことが決定的なキーね。

日産に手の内を明かしても業界の先駆者になり続けられるものを持っているからできることよ。

 

巨額の研究開発費をいくらかでも肩代わりしてもらえることも狙いだろうし、

それに業界全体のレベルアップが インフラ整備にもつながるし、

トヨタにとっては二つの意味でWIN−WINの図式。

 

他社と協力することで得られる 目先のWINと

他社へ協力した後でまた必ず自分に戻ってくる 長い目でのWIN

このふたつを手中にするのが確実とわたしは思っていますから」


「そのことがいつか燃料電池自動車の実現につながってゆくと思われますか?」

 

「ハイブリッドは燃料電池自動車にも応用できる技術。

ハイブリッド・ナンバーワンになった時、トヨタは燃料電池自動車ナンバーワンをモノにしてしまうでしょう。

燃料電池技術を牛耳れば、

かつてパソコンの世界でインテルのCPUがパソコンの頭脳としての機能を独占し、

マイクロソフトのWINDOWSがOSパソコンの血液としての機能を独占したように、

トヨタは車業界全体の主導権を握る。

 

燃料電池技術は住宅にも応用できるから不振続きのトヨタホームも悲願のシェアアップを望める。

トヨタ自動車の狙いは限りなく広く、

それも実用可能な夢ばかりなのだから羨ましくなっちゃうわね!」


「すると他の自動車メーカーには勝ち目はないと?」

そう食い下がる記者に向かって未来は身を乗り出して言う。

 

「さすがはお堅いトヨタさん、盤石の攻めだからもうあとは時間の問題、チェック・メイトよ 未来の車さん!」

 

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